(Set, Topology, Logic, etc.)
このページは計算機科学の観点から,集合論,位相,論理などについて,いろいろ,考えたり,調べたり,お勉強したりしたことを書きます.
ここで参照している文献はインターネット上で
ダウンロード可能なものが多いですが,
本全体は227ページの普遍代数の本なのですが,
数学は集合論の上に築かれているが,直観的な集合論は 簡単にパラドックスに導かれてしまう.したがって,ここでは注意深く 集合の公理を選んだシステムを導入する.このようなシステムとしては,とのことです.Gödel-Bernays のシステムとZermelo-Fraenkel のシステムがあるが Gödel-Bernaysのシステムの方が普遍代数に便利なのでそれを導入する
論理システムとしては,クラスまで含んだ公理系が記載されており, その中で何かの要素になっているものが集合で,そうでないものが純粋な クラスという具合に概念を定めています.
一応,このテキストで導入された公理系の概要を図にしておきます.
公理系は3段階あります.一番下が述語論理の公理系です注意1).ここで一通りの 論理的推論が可能になります.そして,その上にクラスの公理が9個置かれています. それぞれの公理のおよその役割は 図の中に書きました.ここではすべての集合のクラスは設けられていますが, すべてのクラスを集めたものはありません.このようにしてクラスの性質が 規定された後,最後に集合の公理が6個設けられています.正確な論理式は Ježek のテキスト(PDF)を参照してください.
この章の節は次の通りです.
注意1) このテキストでは,述語論理(+ 等号(=)とメンバーシップ関係(∈))の公理が 15 個と推論規則が2個導入されています. ただ,p 4 の下の方に導入されている推論規則の2番目は私には怪しげに見えます. その規則は
(2) obtain f from (∀x)fと書いてあるので,全称記号を外す推論規則のようですが,これは逆に 全称規則をつける推論規則が必要な気がします.著者が書き間違えたのでは ないでしょうか(2018年3月8日時点).
追伸:知り合いとも話し合ってみた結果,ここはほぼ確実に 書き間違えだということになった.したがって,正しくは
と思われる.ただし,最終的な判断は読者自ら行ってほしい(2018年3月19日).(2) obtain (∀x)f from f
Ježek のところでも書きましたが,この公理系はすべての集合のクラスは導入されていますが, それ以上の集まり,たとえば,すべてのクラスの集まりは導入されていません(集合の圏は 記述できても圏の圏は無理ということかな).ということで, この体系は2種類の批判があるそうです.一つは強すぎるという批判で, もう一つは弱すぎる(不十分)という批判だそうです.世の中,なかなか,ままなりませんね(^_^)).
図のまとめ方は私が感じたまとめ方になっていますが,ZFC の公理系は5種類
の公理(群)からなっています.まず,第1に,集合が等しいとはどういうことかを決める外延性公理,第2に特殊な形の集合の存在(つまり空集合と最低限1つの無限集合),
第3に既存の集合から新たに集合をつくる手段の提供(ペア,和集合,関数適用,べき集合),
第4に自分自身を含むような集合の排除(ラッセルのパラドックスなどの排除)のための
上で書いた新たに集合を作る手段の関数適用のところは,
集合への関数適用の結果は集合になるという公理ですが,もとはここには分出公理(集合の中からある性質を持つ要素だけを取り出したものは集合)があったが,1922年に Fraenkel によって上に書いた公理に置き換えられたとのことです.分出公理は現在の公理系から導くことができます.
しつこいかもしれませんが,さらに ZFC の公理系の全貌を簡単にまとめた図を描いておきます. 本当は上の図でも描こうと思ったのですが,描いているうちに大きくなりすぎてポイントがぼやけて しまったので,もう一枚の図で補足しておきます.ポイントは,
実は選択公理も集合を作るので,「集合の生成手段」に入れても良いかもしれません. ただ,「選択公理を仮定すれば...」というように,ほかのZF の公理系との結びつきは多少弱いように思うので,この図では別のところに書いています.
ところで,ここでの集合の公理の中で,私は,どうしても
に,そのことについて書いてみました.もし,私と同じように(かどうか分かりませんが)
この文献は arXiv
Rethinking set theoryにあります. 圏ベースの集合論はなんとなく抽象的な感じがして敬遠していたのですが, この論文を読んでみたところ,むしろこの主張の方々は,直観にあう基礎を作りたがっているの かもと思うようになりました.およそ次の図のようなことが書いてあります.
あと,上の表で f : X → Y から f-1(y)をとる操作の存在の要請は,どこに分類したらよいのかはっきり理解していません.最後の選択公理にも関係しているような気もしますし.すみませんが,興味のある人は自分で読んで,ご判断ください.
ちなみに,この論文に関しては
Asaf Karagila : On Leinster’s “Rethinking set theoryで議論が戦わされています.本人(Leinster) も後で参戦されていますが,Asaf Karagila という人が,あまり圏論的な集合論を好きになれないということで,自分の ブログを持ったのを機会に意見表明されたみたいです.かなり濃く長い議論が交わされていて 面白そうなのですが,私は英語読むのが大変だし,英語じゃなくても議論そものもが 大変そうだしで,根をつめて読んではいません.また時間ができたら読ませてもらおうかと 思っています.皆さんもご興味があれば見てみると面白いかもしれません.
上の論文とかなり似ています.実は,上の論文を読んで間もなく, その論文がLeinsterだと忘れていて,この章を読んでところ 「あれ? どこかで読んだ内容だな」と思ってしまいました. こちらは圏論の教科書で次の章の Representables (米田のレンマ, 集合を"利用した"圏の表現)のために 集合について一言言っておくという内容です.ただ,こちらは, 圏による集合の特徴づけのほかに, 集合になる小さな圏,集合にならない大きな圏の話, また,集合論についての歴史的な話もあります. どちらにしても,これできちんと集合論について勉強するための ものではなく,ちょっとした読み物という感じです.18ページしかないので, ざっと読んでおくと,ほかの読みものを読むとき役に立つと思います. 本全体の構成と第3章の「幕間」の関係は次のような感じです.
こちらは 上の絵の下絵です.手書きで,ちょっと汚いですが,日本語なので残しておきます.
ここでも標準的な ZFC (Zermelo-Fraenkel + Axiom of Choice) の拡張として
クラスを許す von Neumann-Bernays-Gödel の集合論, Morse-Kelley の集合論 を
述べましたが,他にも,
代替的な集合論の積読(To Read List)に積読リストを作っておきました.
某勉強会で発表した「代替集合論」の発表資料
注意 *「代替集合論」という用語はぐぐってもこの意味では見つけられなかったので, alternative set theories を見て,私が勝手に作った用語のような気がします. 「代替的な」集合論くらいにして,1つの用語にとられるの避けるべきなのかもしれません.
集合論には理論的な関心,基礎論的な関心,哲学的な関心もあると思うが, 計算機科学など応用分野の人間からみれば,自分の仕事の中で,この知識を 役立てたいという気持ちがあると思う.集合論の理論で支えられている世界を 直観的に感じ,慣れ,比較的効率的に思考できるようになりたい.
それにはきっと基礎的な部分をしっかり,図などを使いイメージを養いながら 習得するのがよいと思う.そういう目的で 集合論の学習での重要なポイント を書いてみた.ページの内容は
こんなところである.かなり基礎的な記述になっているので,このページとは 雰囲気が違うと思う.
ここしばらく,選択公理からのZornの補題の証明に取り組んでいました.過去, テキストを見ながら何度も証明したはずなのに,独力で証明しようとすると なかなか証明できず,満足いく証明にたどりつくまでにとてつもない長い時間が 掛かってしまいました.ここらあたりの事情は 日記 に書きましたが,証明に取り組んでいる間に色々考えることが あったし,試行錯誤の過程を述べるのも他人の勉強の参考になるかなと思って,
Zorn の補題と選択公理のお話のページを作りました.選択公理の不思議というよりは,Zorn の補題の方が 主役のページです.2018.08.01 (水)
P.S. やはり,Zermelo が整列可能定理を証明した当時,あれだけ論争になったんだから,
選択公理や整列可能定理,Zorn の補題は難しいんだと思う.私が証明に時間がかかったのも
それほど無能という訳ではない(でもそこそこ無能のような気はする).
アトム(要素を含まない空集合以外のもの)を持つ集合論として ZFA があります. ZFA に選択公理の否定を加えた公理系のモデルは比較的簡単に作ることができます.
最近,自分自身の復習のために,ZFC および ZFC の解説と,そのZFA + ¬選択公理のモデルの 作り方を
ZFA の思い出しと選択公理の独立性の証明への応用に書いてみました.
A はアトムの集まり
せっかくZFC までまとめたので,フォーシングと連続体仮説の否定のモデルを作る方法まで
勉強することにした.とりあえず,このトピックスに関する
2020年3月27日追記:私自身も某勉強会の発表でこの解説を試みたものがある.
「連続体仮説の解説 AGAIN」の資料
まず,種々の文献を読むにあたっての全体的な注意を書いておく.
f'(a) := {n ∈ ℵ0 | fG(a, x)= 1}
と置けば,関数 f' : A → 2ℵ0 を定めているとも言える.
さらに,この f' は A から2 ℵ0 の中への1対1関数(injection)になる.この f' が集合 ℵ0 と 2 ℵ0 の間の集合を作るための本質的な役割を果たす
それでは入門的な参考文献をリストアップする.
一応,Self-contained の度合いが高い.数理論理学の話やZFC の公理的集合論の 話なども載っている.したがって,上に書いた注意に反して,これだけは そのまま読み進められるのだが,やはり,基礎知識の解説には限界がある. 読み進めている際に難しいと感じたら,じっくり考えたり,ほかの文献を 適宜探して補足学習するなど,あまり焦らずに読み進めるのが良いと思う.
注意に述べたように「ZFC+連続体仮説の否定」のモデルを作る際に完備ブール代数を使っている.比較的ストーリーは追いやすい.
もともと USENET の sci.math.research に2001年に投稿された
2018年 2月27日時点で日本語の wikipedia ページは出だしの「直観的意味合い」のところの
が、このような議論は表面上不可能である。など,日本語が変(?)と思うような部分も あるが,ほかの入門書と合わせて読むと結構エッセンスだけが良くまとまっている.さらに 英語と日本語の ページも全く同じではなく,これも微妙に良く補い合っている.
基数を集合の集まり(クラス)を bijection で類別したものと考えると,
集合論より先に,クラスの理論が必要になってしまう.そこで順序数から
入り,集合論の枠内で基数の定義までやるという方針で書かれた本のようです.
こちらは集合の基本的なことがらと基数(濃度)の理論までで,順序数は
章としてはありません.その代わり,無限集合についてのいろいろな不思議な
ことについて紹介されています.今,目次を見直してみると,
大学で先生方が作成されたレクチャーノートの類で公開されているものも 沢山あります(もしかしたら,もっぱら,自分の大学の学生向けかもしれませんが, とにかく外に見えているもの).その中で私がぱらっとみて何となく良さそうだなと 思ったものを挙げておきます.興味があれば,例によってタイトル,著者,PDF というキーワードで 探してください.
一応,書き方は一階述語論理を仮定しているわけでなく,自然語っぽい書き方ですが,
集合論の公理(ZFC)をきちんと押さえた形で書いてあるように思います.また,
後ろの方に連続体仮説のことが載っています.連続体仮説の否定のモデルがあるという
フォーシングの話ではなく,実数の集合の部分集合をある種のものに限定すれば
有限,可算無限,連続体濃度のどれかになるということを示すみたいです.
一応,通して読んでみました.およそ集合のイメージが分かっている初心者が
大学での少し公理的な集合論に入っていくときに良いテキストだと思います.
こちらは「公理的集合論」とタイトルから打ってありますね.一階述語論理を
使った記述になります.上のものより密度が濃いです.内容は,
最初に一階述語論理を導入して,公理的な立場から集合論を述べています.ただし,
ただ,地の文では結構,背景や動機が書いてあります.この本が通常の ZFC の
解説でない部分は,最後の4章に,The Universe, Reflection, Elementary Submodels, Constructibity があることだと思います.また,列挙されているだけですが,Appendix の
2つめは,ZFC の公理系に追加可能な公理のリストがあります.
こちらは集合論だけの本ではなく,集合論,ロジック,計算理論の本です.
集合論は1ページ目から50ページまでです.集合論,ロジック,計算理論が
一緒になっているのでお得かなと思い,挙げてみました.上に挙げた P.D. Welch
の本は色々な研究者の写真が載っていたのですが,こちらは,Cantor, Turing, Gödel, Noether, Skolem の似顔絵が載っています.また,付録には,Cantor,
Church, Gentzen, Gödel, Noether, Russel, Tarski, Turing,Zermelo の
写真が載っています.集合論についてはごくごく初歩的な
部分だけしか触れられていません.例えば,計算機科学専攻の学部生が最低限知っておくべきこと
くらいでしょうか.テキストの最後に,Open Logic Text って,協調的に formal meta-logic と formal methods の
中級のオープンなテキストを作る活動という説明がありましたので,今後,拡張されるのかも
しれません.楽しみです.
疑問の意味を明確にしたり,考察を加えたりはしますが,解答は書きません.なぜなら,間違って いるかもしれず怖いからです(卑怯者ですから).何かの本に答えが書いてあるのを見つけたら嬉々として書き込むかもしれません.
「モノイド」が分からなければ,群とか半群に置き換えてもよいですが,どうでしょう?
あとの疑問にも関係しますが,モノイド(あるいは群,半群)って,集合論的には何だろうという疑問がでてきますよね.素朴な集合論で考えると,「モノイド」というなんらかの概念なんでしょうね(うっ,概念ってなんだろう? 次から次に疑問がわいてきますね.私の知り合いの KNDHさんなら,これだけでご飯3杯はいけそうな).
すべてが集合と考える立場だと,モノイドを集合としてうまく定義することになるのでしょうね.その場合は,すべての集合より少ないことになりますが,どれくらい少ないかですよね.集合と考えてよいほど少なくなるかどうか?
一方,モノイドの集まりの方が集合の集まりより多そうな気もしますよね.一つの集合からモノイドが作れれば,モノイドの方が多く(≥)なりそうですものね.実際,集合 X からフリーモノイド Free(X) が作れますから(計算機屋さんには X* と言った方が分かりやすいかもしれません).
これは上の問題より,考えることは少ないでしょうけど,上の問題と似ていますよね.
これは,「何を言っているんだ.おまえは!」という疑問のような気もします.
素朴に考えれば,モノイドという対象ははっきりしているので,集合に入るか入らないか 明確な判定基準があれば,モノイドの(小さい)集合は考えることができますよね.
でも, これは「集合とは何か?」,「モノイドとは何か?」に対してどんな立場をとるかによるんでしょうね.空集合から始めて次々に集合を作っていく立場では,集合の要素としてモノイドという概念はない訳ですから,モノイドを集合の要素たる何かで表してやればよいんでしょうね.
どちらにしても,モノイドを集合の要素として考えないと数学がやれないので, どういう理由をつけて集合の要素として考えるかということだけですね.すでに,上でモノイドとは何かを考察してあるので,それに従って理由付けをするだけだと思います.
Alternative Set Theoriesに関連しています.しかし,上に書いたどの集合論も真のクラスは別の集合の要素に なることは許してないようです.2019.06.22 (土)追記
これを読んだとき,逆に,どこにおかしいと感じる余地があるかが分からないかもしれません. 次のようなことです.
X = { a, b } とします.
Free(X) = { w | w は a あるいは b を0個以上有限個並べた語 }となりますから,
で,かつ,連接の演算があるもの
U(Free(X)) = { w | w は a あるいは b を0個以上有限個並べた語 }で,もう一回 Free をとった,Free(U(Free(X))) では,U(Free(X)) は連接の演算を持っていませんから,例えば, ab と abb を並べたものは,ababb とはならず,(ab)(abb)になるはずではないだろうかという疑問です.つまり,U(Free(X))の中では ab はaとbを並べたものと言う構造は失っており,abb も同様なので,ab も abb もそれぞれ一つの記号としてとらえるのが正しいのではないだろうかという疑問です.そうすると,Free(U(Free(X)) は可算無限個の記号の集合から作られた自由モノイドで,U(Free(U(Free(X)))) はその台ですから,
で,かつ,連接の演算を考えないもの
Star(Star(X)) = U(Free(U(Free(X)))) = U(Free(X)) = Star(X)と考えるのは虫が良すぎるのではないかということになります.
要は集合 U(Free(X)) の要素は一体何だろうということに答えを出せば良いのですよね.くっつけると自然に中の括弧が消えるモナド的ななにか?
(注)Star(X) は計算機屋さんには,記号の集合 X に対してクリーネ閉包 X* と言った方が分かりやすいですね.
(ちょっと個人の覚書のような内容で申し訳ありません.次第に整理していきます.
圏論の方はここより整理ができていますので,ご興味のある方は
圏論 (Category Theory) のお勉強
もご参照ください.
)
ここでは,私自身が勉強しながら感じた,位相のごく基礎の部分の勉強に役立つ情報を 書くようにします.とりあえず,「集合と位相」とかいうようなタイトルの授業で 取り上げられそうなごく初歩の部分だけです(たぶん,大学の数学科の1年生か 2年生で習うような部分までです).勉強が進んだら,また,書く内容も 増えるかもしれませんが.
エディンバラ大学のレクチャーノートです.彼のホームページ
Tom Leinsterで general topology という文字列で検索してみてください.PDF が見つかります. 現時点 (2018.01.13) で 85ページの薄いテキストです.位相空間 (Topological space), コンパクト性 (Compactness), 連結性 (Connectedness) だけの内容です.定義の 裏の意図などについて親切に触れられていて,私は分かりやすかったです.
計算機への位相の利用でいくつか調べ,読もうと思っている参考文献をいくつか 挙げておきます. 所謂,積読です.リンクは張りませんが,PDF でダウンロードできるものばかりです. 興味があれば,タイトルと著者で検索してみてください.
Wikipedia 英語版の "Hilbert system"(2018年1月17日時点) から Hilbert 流の一階述語論理の体系のエッセンスを A4 一枚程度にまとめておく.一目で眺められるようにまとめておくことには意味があるのではないかと思う.
一応,図を説明しておく.
まず,変数や関数記号(定数は arity=0 の関数記号とする)から Term を作り, それと述語記号あるいは等号(=)からアトミックな論理式(Atomic Formulas)を 作る.そして,それらのアトミックな論理式をもとに,論理記号 →, ¬, ∀ で つなげて,一般の論理式を作る.
公理は真ん中の四角に書いたものである.命題論理の公理スキームがP1 ~ P4 の4つ. 全称記号を扱うための公理スキームが Q5 ~ Q7 の3つ.等号を扱うための公理スキームが I8, I9 の2つ.ここで公理と言わずに公理スキームといっているのは,それぞれが1つの論理式ではなく,例えば,P1 では,αに任意の論理式を入れたときの論理式α→αが公理であると 言っている訳で,無数の公理を書いているからである.公理としては,これらの公理スキームのほかに,さらに,これらから作られた公理に対して,全称記号を かぶせたものも公理とする.これは,次の推論規則(inference rule)を モーダスポーネンス1つだけにするためのようだ.
そして,上で書いたように推論規則はモーダスポーネンス1個だけ.数理論理学の 本には,述語論理は,もうひとつ,一般化(Generalization rule)が設けてあることが 多いと思う.ここでは,それを公理の方に持って行って,推論規則を1つだけに したみたいだ.
簡単な一階述語論理の体系を1ページにまとめておきたくて,この絵を作ったが, 若干,上に書いた全称記号をかぶせたものの公理の扱いが自信がない.もし,誤解が あったら申し訳ない.というくらいの確度のものとして,この絵をみていていただきたい.
補足:日本語版 Wikipedia の「一階述語論理」の項 (2018年 1 月 19 日時点) には,推論規則として
とある勉強会で,連続体仮説の否定の無矛盾性の解説をするために レーベンハイム・スコーレムの定理を分かった気にさせる解説を執筆完(2018.09.29).
レーベンハイム・スコーレムの定理 (初出 1915年 ) は,一階述語論理のモデルの大きさに関する命題である.大雑把に言えば, その一階述語論理に用意された記号の集合が可算無限個のとき,その論理体系の中の 公理系がモデルを持てば,そのモデルの要素数(基数)を可算無限個まで絞ることも, 非可算無限個まで水増しすることもできるという内容である.
これは,全体が可算個の集合からなる集合論のモデルを保証したり,自然数の集合のサイズが 非可算個でも矛盾がないことを意味し,一見,それまで築かれた数学的常識と 反するので,発見当初は,レーベンハイム・スコーレムのパラドクスとして 扱われた.その後,この定理の解釈が整理されるとともに,今は,特にパラドクスでは ないという認識になっていると思う.
私は,今,勉強会のためにこの解説を作りながら,この定理は 無限集合に関する我々自身の思考に関わるもので,とても 含蓄のある定理だと感じている.
上で書いた連続体仮説の解説を発表した勉強会は 2018 年 10 月 17 日に終わり, そこのホームページに PDF で発表資料を置いてもらった.タイトル
と 「PDF」というキーワードでぐぐれば出てくると思う.「連続体仮説の解説 AGAIN」
2020年3月27日追記:結局,その資料はこのサイトにも置くことにした.その勉強会で配布したときの表紙も載せておく.
「連続体仮説の解説 AGAIN」の資料
名前のところだけはローマ字にした.この後,ほとんど同じ内容を別の 勉強会で発表した.そのときは表紙は若干変えて
になった.この2枚目の表紙の方が連続体仮説の否定の無矛盾性の内容を より正確に表している.最初の表紙は,最初の表紙では,最初の否可算無限の 基数ω1 を ωと |2ω| の間に入れるといっているだけだが, 二番目の表紙では,それをどうやってやるのかを表現している.つまり,集合 2ω の中にωn を押し込む(ωn から 2ω の中への 1:1 対応を作る)ことにより,
の状態を作るのである.ω=ω0 < ω1 < ... < ωn ≤ 2ω
発表の後見つかったいくつかの間違いを修正したが,まだいろいろある可能性もあるので あくまで参考に,全体的な流れをつかむために使い,詳細は自分で勉強して欲しい.
「メモのような日記のような」のコーナーに,ごくごく簡単な ゲーデルの不完全性定理の説明 を書きました.下の図のような説明です.「AI とは何か?」という議論においての簡単な説明なのですが, およその証明の概要は分かるのではないかと思います.ゲーデル数とか,どうやってゲーデル文を 定義するかの細かなところは書いていません.それらはしかるべき書籍にあたっていただくことにして, とりあえず全貌が分かるのが取り付く第一歩かと思います. あちらは,日記ですから, 日々考えたことや起こったことなどの余計なことがたくさん書いてありますので, その一部分だけへのリンクです.
尚,上のリンクをピックして,ちょうどゲーデルの不完全性定理のところに 行かないときは,もう一度リンクをピックしてみてください.ページの 途中にリンクするときは,そのページが大きいと読み込みが終わるまで きちんとそのリンクの個所に位置付けられないことがあるようです.
また,一階述語論理の形式的体系やモデル,完全性定理に関しては, 上のレーベンハイム・スコーレムの定理のページの見ると,関連事項が 書いてあります.ご参考までに.
Peter Smith : An Introduction to Gödel's Theorems (Cambridge Introductions to Philosophy) 2007, 2nd Edition 2013, 402 pagesを出しているのだが,そちらは量が多くなりすぎたので,もう少しコンパクトなものを書いたとの こと.こちらの Gödel Without (Too Many) Tears は彼のホームページから PDF でダウンロード可能です.このテキストは述語論理などの定義は省略されて,最初から不完全性の議論に入っていますので,ほかで基礎知識は学んでおく必要があります.
ほかにもレクチャーノートを公開されている先生方は沢山いらっしゃると思います. 私はこのような教材を見つけて勉強させていただいている訳で,これらの方々に感謝します. 私にはこれらのレクチャーノートの中でどれが良いのか判断はつきません.学習の目的にもよるでしょうし.皆さんも探して見ると,自分の用途にあったレクチャーノートが見つかると思います.
一応,前半部分が圏論の入門で後半は,圏論をロジックに使うと どんな良いことがあるかが書いてあるみたい.圏論が何の役に立つのかについて悩んでいる人のヒントになるかも.私も悩んでいるので,そのうち読もうと思う(これは圏論の説明のページに 書くべきだったかも).
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