集合論:正則性 (Regularity)

24th Jan. 2018 (Updated)
24th Jan. 2018 (First)
Akihiko Koga

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集合論の公理で正則性 (Regularity)

Axiom of Regularity

∀ A (A ≠ ∅ => ∃ X ∈ A (X ∩ A = ∅))
(空でない集合は自分自身とまじわりの無い要素を1つは持つ)


は何か変な表現方法の公理です.

本当は,

  1. A ∈ A となるような集合 A (つまり,A = { ..., A, ...} ) は存在しない とか

  2. A ∋ A1 ∋ A2 ∋ A3 ... という無限列は存在しない
などと言いたいのに,上のように持って回った言い方をする.こちらとしては,
もし,A ∈ A となる集合や Ai ∋ Ai+1 となる集合の無限列があったらこの正則性の公理に反する集合を簡単につくれちゃいますぜ.それでもいいんですかい?
というように脅かされている気がして気分が悪い.これは公理の形こそ肯定的な文章になっているが,私には背理法の匂い注)がする.


正則性公理を使って脅かされるの図
日記の絵を再利用しました

ということで,正則性公理についてはなんとなく 「もやもや感」が付きまとって嫌な気分になるので,ここでは,正則性公理と上で書いたような性質との間の含意関係などを図をつかって証明して,少しでも「もやもや感」 をなくすことにしたい.

[もやもや感」の解消

(このページの内容は 英語版の Wikipedia の Axiom of Regularity の項目 を参考にした.と言うか殆ど絵を入れただけのような気もする)

  1. 正則性 => A ∋ A1 ∋ A2 ∋ A3 ... という無限列は存在しない

    次の図のように,このような無限列 A1 ∋ A2 ∋ A3 ... が存在すれば

    B := {A1, A2, A3, ...}
    とすることにより正則性に違反する集合 B を作れる.こういう大元の集合の A が違反すると言わずに,わざわざ B を作って,それが違反するというところがいやらしい.

  2. 正則性 => A ∈ A となるような集合 A (つまり,A = { ..., A, ...})は存在しない

    これは,A ∈ A のように書くとすぐには見て取れないが,A ∋ A とかくと,

    A ∋ A ∋ A ∋ A ∋ A ∋ A ∋ A ∋ A ∋ A ∋ ...
    という無限列ができるから,上の場合の特殊な場合になっていることが分かる.

    でも,単独でも証明しておこう.

    A を A ∈ A となる集合とする. 次の図(と言って良いかどうか)のように B := {A} とおけば,この B が正則性に反する.

  3. A1 ∋ A2 ∋ A3 ... という無限列は存在しない & 選択公理 => 正則性

    対偶をとり,選択公理が成り立つとの仮定の下に,正則性を満たさない集合があったとき,正則性を満たさない集合があったとき,A1 ∋ A2 ∋ A3 ...という無限列が作れることを示します.

    正則性を満たさない集合 A があったとすると,A の任意の要素 X は A の要素を含みます( つまり ∀X (A∋X => ∃Y (X∋Y & A∋Y)).ですから, A の勝手な要素 A1 をとると,A1には A の要素がありますから,それを A2 として, A2 は A の要素 A3 を含みますから,A3 を取ってと言う具合に,次々に ∋ 関係にある集合の列

    A1 ∋ A2 ∋ A3 ...
    が得られるわけです.ただし,ここで無限回の要素の選択が必要ですから,選択公理を使う必要性があることに注意してください.

  4. 正則性公理のまとめ

    私が正則性の公理に感じる気持ち悪さは,その意図は

    どんな集合の要素を ∋ 関係で辿って行っても無限列は作れない
    のはずなのに,
    〇〇な要素が存在する
    という形の公理になっていることなんです.それじゃあ,「その存在する以外の要素に ついてはどうなるのだろう?」という疑問が湧いてきます.それなのに, すべての集合について,その要素に ∋ の無限降下列を禁止できていると!

    A を集合としたとき,その要素すべてについて A との共通集合が空である必要は ないのだから,そのようなお目こぼしにあずかった要素をつないで,∋ の 無限列を作れないのだろうか? いや,これは上の

    正則性 => A ∋ A1 ∋ A2 ∋ A3 ... という無限列は存在しない

    で証明したのだから無理なんだろうけど,「なんで?」.たぶん,と言うか,上の 証明から,こういう ∋ の無限列ができるような状況が生じたときは, うまく集合を構成しなおして,つまり余分な部分を削り取って,正則性に 違反する集合を作れるということがミソだと思うんだけど.

  5. 悪あがき

    正則性に違反する集合の再構成をもう少しみておきましょう.

    1. A := {B}, B := {A} まあ,まとめると A:= {{A}} かな

      それぞれの集合について,その要素との共通集合は,

      A ∩ B = {B} ∩ {A} = ∅
      B ∩ A = ∅
      だから A も B も直接は正則性公理に違反しないけど,この二つで ∋ が 巡回する集合集合を作ることができる.A ∋ B ∋ A ∋ B ∋ ・・・ですね.

      これから正則性を持たない集合は C := {A, B} とやればよい.うーん, 証明のままですね.連立方程式を行列を使って1つの1次式にしている ようなものかな.

    2. 何かないかな? 有限の長さでサーキュラーになってても上と同じことだし. どこまで掘ってもそこが見えないものとか,向いても向いても向き続けられる無限玉ねぎとか.

  6. 正則性のまとめ2

    上に書いた最後の

    A1 ∋ A2 ∋ A3 ... という無限列は存在しない & 選択公理 => 正則性
    の証明からは,正則性の公理の正体は,∋ の無限降下列の禁止を 選択公理と独立にしたものみたいですね.


注)背理法の匂い
√2 が有理数でないことの証明として,x2=2 となる有理数 x=q/p が存在したら矛盾がでることを言うが,A∈Aという集合が存在しないことを正則性公理に帰着させるのはこれと似ている.有理数の例の場合,『もし,√2 が有理数だと仮定したら,「有理数が お互いに素な整数の組 p, q を使って,q/p と書ける.』という規則が崩れてしまうがそれでも良いのか?」と問うている.集合の場合も, 「A∈Aという集合が存在したら,集合に設けた正則性の規則が崩れるがそれでも良いのか?」と問うている.背理法は昔から好きになれない人がある比率いるような気がする.


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