代替的な集合論 (Alternative Set Theory)

26th Sep. 2019 (Updated)
6th May 2018 (First)
Akihiko Koga

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内容

  1. 動機
  2. 文献
  3. 近況(2019.06.22)
    勉強会でこのテーマで発表したこと.

動機

現在の標準的な集合論は ZFC (Zermelo-Fraenkel + Axiom of Choice) だと思うが, その他にもいろいろな提案がある.すでに,集合,位相,論理など でも,集合だけでなくクラスやクラスの集まりを扱うものも紹介した(von Neumann-Bernays-Gödel の集合論, Morse-Kelley の集合論).これらは普遍代数圏論など, 扱う対象が通常の集合を超えるとき必要であり,また,そのための ZFC の素直な拡張である.

しかし集合論では,そのようなZFC の拡張でなく,大きく ZFC と異なっているものがある. 例えば,∈ の無限降下列を許したり,すべての集合の集合を許したりである.このような 集合論を Alternative Set Theory という(日本語の熟語は知らないので,とりあえず, 「代替集合論」あるいは「代替的な集合論」と言うことにする).

代替的な集合論のサーベイを読むと,これらの提案は ZFC を置き換えようと強く思って提案されているというよりは,このような集合論も有り得るのだという可能性で出されていることが多いらしい(と,私の読んだサーベイの著者は思っている).

ここでは,それらの代替的な集合論を勉強するための,文献を列挙しておく.私も本業は計算機科学 なので,このような数学の基礎的な部分には興味はあるものの,専念してやる時間はない. ぼちぼち,読み進めるのに,とりあえず,今まで調べた文献を列挙しておく.毎度のことながら 直接的なリンクは張らないので,コピー&ペーストで検索してください.

文献

  1. 一般的なサーベイや解説
    1. M.R. Holmes : ALTERNATIVE SET THEORIES, 2006, pp1-43
      同じ著者を含む下のものより薄いが,こちらは第9章に Small set theories がある. その中の一つ Pocket set theory は,この著者らが提案しているもので,無限集合には 1種類の濃度しかないような公理を設けたもののようだ.目次から判断するに,次の サーベイの内容をカバーしているように見える.ページ数は少ないので,それぞれの 記述が薄いのかな.

    2. M.R. Holmes, T. Forster and T Libert : ALTERNATIVE SET THEORIES, 2012, pp559-632 (74 pages)
      上の著者 M.R. Holmes とその他の著者が書いた少し多めのサーベイ.内容は,
      1. ZFC の概要
      2. ZFC にクラスを設けた体系
      3. Atom (集合以外の基本要素)を設けた集合論と無限降下列のある集合論
      4. New Foundation および関連のある体系(最大の集合を設けた集合論)
      5. Positive Set Theory (まだ読んでないのでよく分かりませんがλ計算とかと関係しているとか)
      6. Non-standard Analysis に動機づけられた体系
      7. 奇妙な体系

    3. T. Nitta, T. Okada, A. Tzouvaras : Classification of non-well-founded sets and an application, 2003, pp1-30
      これはサーベイではなく,non-well founded set theories (Finsler, Scott, Boffa, Aczel) の比較をした論文みたい.

  2. New Foundation, Universal な集合(すべての集合の集合)のあるもの
    1. M.R. Holmes : Elementary set theory with a universal set, 1998, pp1-244
      最大の集合をもつ集合論です.もともと,1937 年に W.V.O. Quine が, NF(New Foundation 新しい基礎)として提案したものです.これ自身は ZFC のもとでの無矛盾性は 証明されていないそうです.しかし,このバリエーションである,アトム(集合の 要素になれて,それ以上何かを含むという関係を持たないもの)を 設けた NFU は無矛盾であることが示されているそうです.

    2. Flash Sheridan : A Variant of Church’s Set Theory with a Universal Set in which the Singleton Function is a Set, 2013, pp1-106
      こちらはほとんど内容を把握していません.Universal set と Chrch の言葉に 引かれて,私の積読に載せています.

  3. Regularity (Foundation) の公理の成り立たないもの
    1. P. Aczel, M. Rathjen : Notes on Constructive Set Theory, 2000/2001, 88 pages

  4. ... (続くかも)

近況(2019.06.22)

先日(2019.06.19 (水))に某勉強会で,上に挙げた
M. Randall Holmes, Thomas Forster, and Thierry Libert : ALTERNATIVE SET THEORIES, Sets and Extensions in the Twentieth Century 2012, 74ページ)
に基づいて,種々の代替集合論を調べた結果を発表してきた.「調べた」と 言っても,基本的に上の文献を読んで,分からないところを別の参考文献に 当たったり,また,前の方に前提となる知識を補ったりしただけのものだったりする.

追記:2019年9月26日(木)

発表資料の PDF は,多少修正したものをこちらにも置くことにしました.

某勉強会で発表した「代替集合論」の発表資料


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