普遍代数のチュートリアルなど(Tutorials and textbook for Universal Algebra)

普遍代数のチュートリアルや教科書をいくつか挙げておきます.ここでは直接のリンクは張っていませんが,これらは PDF で利用可能です.タイトルと著者,プラス PDF で検索してみてください.

チュートリアル

  1. Ross Willard : AN OVERVIEW OF MODERN UNIVERSAL ALGEBRA, 2000, pp1-23
    若い数理論理学者に向けた,普遍代数に関する過去25年(2000年を基準にして)の成果と問題を易しく紹介するそうです.今言ったことと同じ内容なんですが,論文をプリントアウトしたとき, アブストラクトを表紙にしたので,載せておきます(実は,印刷だけして読んでない論文が あまりにも多いので,印刷したら,せめて概要 (Abstract) だけは読んで表紙にするという ことをやっていたのです.持ち歩いて表紙を眺めるだけになりましたが,一歩前進かなと思います).
    Tutorial of modern universal algebra

  2. Peter Jipsen : Tutorial on Universal Algebra, August 13, 2009, 61 slides
    こちらはスライドです.3スライド目,4スライド目に 無料で利用可能な普遍代数の参考書とそのURLが載っています.内容は
    Part I: basic universal algebra and lattice theory
    Part II: some advances of the last 3 decades
    です.

  3. Matt Valeriote : Lectures on Universal Algebra, November 8, 1999, pp1-28
    大分前に読んだのですが,確か,分かりやすかったような気がします.目次を載せておきます.
    1. Algebras
      Definitions and Basics

    2. Varieties
      Birkhoff's Theorem "a Variety is an Equational Class"

    3. More on Varieties
      Subdirect Irreducible Algebras
      Mal'cev term

    4. Finite Algebras
      Tame Congruence Theory

    この中に出てくる Variety というのは,同じような代数の集まり(クラス)です. 具体的に言うと,同じシグニチャ(関数記号の集合)を持った代数の集まりから,部分代数,直積,準同型で 作られるすべての代数を加えてできた代数の集まり(クラス)です.

    こうやって できた代数のクラスは,あらかじめ等式の集合を指定して,その等式すべてを満たす 代数の集まりとしても表現できるし,逆に等式の集合を満たす代数の集まりは, 適当な代数の集まりから先ほどの3つの操作を繰り返し適用して作った代数の集まりとしても 表せるというのが第2章に書いてある Birkhoff の定理の内容です.

    Variety の章が2つありますが 普遍代数は Variety の研究が占める割合が高いようです.

    このチュートリアルには練習問題もついています.

教科書

上のPeter Jipsen : Tutorial on Universal Algebraに色々載っているのですが, そのうちのいくつかだけ挙げておきます.
  1. Stan Burris and H. P. Sankapannavar : A Course in Universal Algebra, Springer-Verlag, 1981

  2. Jarda Jezek : Universal Algebra, 2008
    Jezek の本は,最初,数学の基礎として,数理論理学と公理的集合論の章が設けてある. 公理的集合論では ZFC(Zermero Fraenkel + Axiom of Choice) ではなく, Von Neumann, Gödel, Bernays の公理系が使われている.これは集合だけでなく クラスまで定義するものだ.これは普遍代数などでクラスになってしまう Variety を 扱うために必要なことなのだろう.この章の内容は, 集合論のページ にもう少し詳しく説明した.ただし,4ページの述語論理の推論規則 (2) については,
    (2) obtain f from (∀ x)f
    は,
    (2') obtain (∀ x)f from f
    の間違いではないかと思う.論理的にはどちらも正しい操作なのだが,採用している 公理の集合からは,(2)だと本来証明できるべき論理式が証明できなくなるような 気がするし,通常の Hilbert 系の述語論理は (2') を使う.本人に確かめ ようとして,いろいろ探して見たが すでにお亡くなりになったという情報を得た.したがって,確定的なことは言わないが, 私は上のように思う.

    これは上の著者とタイトルそれに PDF を加えて,google で検索すると,たぶん, ハワイ大学のページにPDFが置いてあるのが見つかると思う.上に書いた 4 ページ目の 話はそのPDFについてである(2018年3月8日時点).

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