使えるものを総動員してドイツ語単語を覚える

Lerne deutsche Wörter mit allem,
was du verwenden kannst

by Akihiko Koga
23 July 2020 (Update)
25th May 2019 (First)
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What's new: 次のページを作りました.2020.07.23

内容

  1. このページの内容は
  2. 本論
    1. 「Schließen」の巻

    2. 「『フェリー(Fähre f)』は進む」の巻

    3. 「Doch (独) は though (英)」 の巻

    4. 「wichtig は重さ (weight) があり,とても重要」の巻

      (幕間)印欧祖語

      (幕間)子音の関係の整理

    5. 「aus は out 」 の巻

      (幕間)子音の推移

    6. 「よく使われる動詞(1)」の巻

    7. 短い物語を読みながらドイツ語単語を覚える
      グリム童話「かえるの王様または鉄のハインリッヒ」

      次の読み物として「ブレーメンの町の音楽師 」を

      使えるものを総動員してドイツ語単語を覚える (2)
      で始めました(2020.07.18).
  3. あとがき
  4. 参考文献,参考サイト

このページの内容は

このページの内容は

など,何でも,利用できるものは駆使してドイツ語単語を覚える工夫をしようという企画です.一つ上のページにも 書いたように,これは以前,個人的なメーリングリストに投稿したものを書き直したものです. もともとの内容は全6回分しかなく,包括的にドイツ語の単語を覚えるためには,かなり 内容が不足していると感じていました.そこで,将来的にこの趣旨でまとまった内容が書けないか 試してみるために,元の内容から多少増やしたパイロット版としてこのページを作っています.

まず,断っておかないといけないのは,ここに書いてある内容は,言語学的に何かを主張しようと いう気は一切ないことです.単に,ドイツ語単語を記憶するための手がかりとしてここの内容を 提供するという趣旨です.ですから,言語学を専攻している方々は,ここに荒唐無稽なことが 書いてあるからと言って苦情のメールを送ってこないようにしてください.また, ここの情報を利用する人は,ここに書いてあることは単に記憶を助ける手がかりであるということを 十分認識してください.

あと,ところどころ,参考文献のところに書いたドイツ語語源小辞典 を参照するところがでてきますが,これは語源小辞典 と略します.また, オンラインの英語の語源辞典を参照するところもよくでてきます.こちらは オンライン英語語源辞典のように略します.

目次へ

本論

  1. 「Schließen」の巻

    ドイツ語の schließen はどんな意味でしょう?

    これは「閉じる」,つまり,英語の close です.これら二つの単語はちょっと見たところ,あまり似ていません. ずいぶん,印象が違います.でも,次のように,close の前に s を補ってやると, 子音は符合します.西洋では,語の頭の s が消えているか, あるいは,追加されているといった感じのする,2国間の単語がしばしば見つかることが あります.また,西洋の言葉では子音が大切です.母音はいろいろな理由で変化したり, あるいは弱くなって消えてしまっている場合があります.フランス語なんて凄まじいですね. 単語に母音がなくなって読まない子音がたくさんくっついていて,それが後ろに母音で 始まる単語が付くと突然発音されるようになってくる.面倒ですけど,元の語を辿るには 貴重な手がかりです.

    二つの単語の音は大まかに上のように対応しています.「lo (ロゥ)」と「lie (リー)」を対応させるのは 強引に見えるかもしれませんが,とりあえず,この二つの語を頭の中で結合させて 置くと記憶の助けになります. また,ドイツ語の sch が いつもいつも sc に対応する訳ではありません.でも,schreiben と scribe はこの対応の例ですね.

    いったん,頭の中で schließen と close が結びつくと,次の単語は 比較的容易に覚えられるでしょう.右側を紙などで隠しながら英語や日本語の 意味を言ってみてください.語学において,単語は時間をかけて意味を引き出すのでは だめで,瞬発力が必要になります.だから,何度も練習して,すぐ意味が引き出せるように するのと,あと,この例の対応を頭にしっかり作ると似た対応がでてきたとき応用が利きます.

    ドイツ語単語意味
    schließenvt 閉じる
    Schließlichadv 最後に.-lich は英語だと like です.「Algol-like な言語」などは計算機屋さんにはおなじみの用語ですね. ドイツ語の ch は k とかなり関係の深い音です.
    Schlußm 終わり(close です)
    Schlüsselm 鍵 (-el は道具の接尾語)
    Schloßn 錠,城

    単語だけの紹介だとなんなので,例文を一つだけ載せておきます.

    それではまた次回.

    
    
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    2016.07.17 に書いたものを書き直した.2019.05.25 (土)
    
    
  2. 「『フェリー(Fähre f)』は進む」の巻

    fahren vi (乗り物に乗って)行く

    • 今回は「前に進む」感じの単語を勉強します
    • 音声学の基礎知識も少しだけ仕込みます

    注意) しつこいですが,ここの内容は言語学的な主張ではまったくありません. あくまで記憶のための連想を強化する便宜的な目的です.この位言っておけば,無用なクレームを 受けないですむのではないかと....

    
    
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    2016.07.16 に書いたものを多少加筆して書き直しました.2019.05.26 (日)
    
    
  3. 「Doch (独) は though (英)」 の巻

    D の仲間の音(d, t, th(ð), th(θ))の関係を使った覚え方

    前回は唇で作る音,b, p, v, f の関係を使ったドイツ語単語の連想方法をお話ししました. 今回は少し口の奥に引っ込んで,歯茎の裏あたりで作る音に着目します.つまり,d を基準と する音,d, t, th(ð), th(θ) です.ドイツ語では th は t の発音なのですが, 英語と一緒に考えると結構連想が利きます.

    d, t, th(ð), th(θ) にも b, p, v, f と同様のひし形の関係があります. つまり,d の発音のとき,声帯の震えを無くして無声音化すると t になり,d で破裂を 不完全にして,空気を漏らすと英語のth(ð),そして,t の破裂を不完全にしたものと th(ð)の無声音化が英語のth(θ)です.ドイツ語では th はどちらも t の発音ですね.

    ということで,d, t, th(ð), th(θ) を仲間と考えるとドイツ語,英語で似た単語が たくさん見つかります.

    また,ドイツ語と英語で概ね次のような対応があります.

    ドイツ語英語
    dth
    td

    あと,z (ドイツ語)- t(英語)という関係もありますが,これはまた今度.

    では,d(ドイツ語)-th(英語)で気づきにくいものをあげていきましょう.

    ドイツ語単語意味
    dochadv. しかし though(英)
    ch(ドイツ語)-gh(英語) は次くらいのお話かな)
    durchprep. ~を通って through(英)
    母音は変化しにくいという印象があるかもしれませんが, 結構変化しますし,弱くなると無くなることがあります.
    dicka. 厚い thick(英)
    dichta. 密な -t は過去分詞的な意味を加えます.
    thick されたというような感じでしょうか.また,-t はそれがつけられた 単語を名詞化する場合もあります.どちらにしても,その前の音は t に つられて無声化したり,破裂が不完全になることがあります.
    dünnthin(英)
    dick(厚い) とdünn(薄い) は語尾の関係が max(大きい) <->min(小さい) のような音の関係になっていますね.最後が n に変わって,その 直前の母音が少し変わるという意味で.
    deckenvt. 覆う.
    dick (英語 thick (厚い)) から連想して!
    ついでに前綴り ent- 離す を付けた entdecken vt 発見する(discover = dis(away)-cover) も覚えておきましょう.この ent- (離す) はどこかでやる と思います.とりあえず,英語の anti- (アンチ)と同根と 思っておいてください.
    entdeckenvt. 発見する.一つ上の項目の説明の部分を参照してください.
    Deckef. 覆い.
    Dachn. 屋根
    覆われたものかな.英国の首相に Thatcher という方がいましたが, これは「屋根をふく人」という意味ですね.

    うーん,dick から下,全部同じ系統の語で固めてしまいましたね.まずは1つの系統の 語でしっかりイメージを固めてしまって,あと,周りに広げていくのは良い学習方法と 思います.d (独) - th (英) の対応は結構あるので,自分でも探してみるとよいと思います.

    次は,t(ドイツ語)-d(英語)です.一度,表をみたら,次は 右側を隠して,先頭に t を d に変えたり,すでに勉強した音の近さを利用して 英語の似た単語を思い浮かべながら意味を言ってみてください.言い忘れましたが, 上の表も同じように先頭の d を th に変えて記憶を確かめるのに使ってください.

    ドイツ語単語意味
    Taln. dale(英) 谷
    dale があまり馴染みのない単語だったりするので,これは独英両方 一度に覚えるのが良いのでしょう.
    tauba. 耳の聞こえない deaf(英)
    b と f が仲間であることも思い出しながら覚えます
    tauchenvi. 潜る duck(英)
    でもアヒル(duck)はドイツ語で Ente f. なんですよね. これはラテン語の anas (duck) と 同根らしいです.
    Teilm. 部分 deal(英), deal of たくさん
    tiefa 深い deep(英)
    Tiern. 動物. dear(英語)しか
    ちょっと独英で指している動物の範囲が違いますね
    Tishm. 机 desk(英)
    dish, disc (sch (ドイツ語)-sc(英語)の例)
    Todm. 死 death(英)
    tota. 死んだ dead(英)
    Torn. 門 door(英).
    through と作りと意味が似てますね.もっとも, 最後の-gh に対応する部分は Tor にも door にも ありませんので,似ているのは最初の2つの子音だけですけど.
    Türf. 戸 door(英)
    through もこの類の語のような気がしますね(^_^)

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    2016年7月17日の資料をもとに多少加筆 2019.06.05 (水)
    
    
  4. 「wichtig は重さ (weight) があり,とても重要」の巻

    今回は,ぐっと口の中の奥で発音する g の仲間たちのお話です.


    硬い口の蓋(硬口蓋(こうこうがい))と呼ばれる部分から 軟らかい口の蓋(軟口蓋(なんこうがい))と呼ばれる部分に移行するあたりです.


    g の音に関して注意すべきことは,これは半母音化/母音化の音があることです. g を発音するあたりを緊張させて,g のようには破裂させないようにして, 舌の隙間から「い~」と空気を逃がす音と,さらに音を澄ませてだす「いー」と 言う音です.

    この系統の音は英語もドイツ語も有声摩擦音がありませんね.どうでしょう, もしかして,今は発音しない英語の -gh- って有声の「ヒ」みたいな音だったんでしょうか? なんか無声だって,どこかで読んだ気もします.まあ,どちらにしても -gh- も g の仲間に入れておきましょう.

    一番下の h は我々日本人には要注意の音です.日本語の h の音は, 昔は p の音だったとか. 西洋の言語では口先で作る p と口の奥で作る h が合流することは, まずありません.

    次に g の仲間で音と意味が似た単語を勉強します.

    その前に,一つ,「L」が運ぶ意味に関するノウハウを書いておきます. これは言語学的に全く根拠のあることではありませんが,沢山の単語を みると何となく,「こんな意味を伝えていると考えると覚えやすいな」という くらいのものです.

    L の持つ主要な意味
    L の意味例(ドイツ語,英語)
    置く,持ち上げる,押す,放置するlay (英), legen (独), slay (英), schlagen (独)
    slay, schlagen の s-, sch- が強めの前綴り,例えば,英語の前つづり, ex- (out)のようなものと思うと,slay は lay out, schlagen は aus|legen です.どちらも「配置する」という意味になってしまい,語の意味と遠いので, ex- を down くらいに 強い意味にとると,lay down で大分,「slay (英) 殺す」, 「schlagen (独) 打つ,殴る,打ち負かす」といった意味に近くなります. こうなるとかなりこじつけっぽいかもしれませんが,語と意味の連想はできますよね.
    流れる,ゆっくり動くflow (英), glide (英), glatt (独), slide (英)
    先頭の子音は前つづりの成れの果てと思うと, より覚えやすいかもしれません. 西洋の言葉で先頭の s- を 取り去っても,意味があまり変わらない語が見つかることとも 呼応してますし. もっとも,これは覚えやすいというだけで, 言語学的に根拠を持って言っている訳ではありません.
    光るlight (英), licht (独), glass (英), glänzen (独), lucky (英), Glück (独)
    ここも先頭の g- は前つづり(ge- など)の成れの果てで,時々落ちたりすると 思えばどうでしょう? 英語で blanc 白, blank 空白, blind 盲目の, blaze 燃える などが印欧祖語の語根 *bhel- to shine, flash, burn から来ているとされています. また,英語の,gild, glad, glance, glare, glass, glaze などは,印欧祖語の 語根 *ghel- から来ていると言われています.記憶のための方便としては,因数分解して l の部分が光ると思った方が効率が良い訳です.あと,掲示板などが炎上するのを flame と言いますね.こちらの印欧祖語の語根は *bhel- to shine, flash, burnです. 印欧祖語の語根の先頭に * がついているのは,それが直接文献などに現れた形でなく, いくつもの他の文献から想像した形であるということを表しています.

    「流れる」と「光る」を繋ぐところに,「糊(glue)」とかがあるので, 「流れる」と「光る」が完全に無関係では無いんですよね.連想のためのこじつけですけど.

    あと,ここでは詳しく書きませんでしたが,「音が響く」という意味を持つ単語も あり,もしかしたら,「光り輝く」の聴覚的な拡張なのかもしれないなと思っています.

    まあ,上のは一種の「とんでも語源学」ですが,ある程度あたります.別に sound symbolism みたいに,音が意味を規定するというようなことではなく, ある種の語根が沢山の単語に分かれた場合は,結果的に音と意味の繋がり みたいなものができる可能性があるということです.

    また,ここでいう L は,単語の比較的先頭に現れるときのことを言っています. 単語の末尾の L は,例えば,英語では -le や -el みたいな語尾で道具を表したり, 小さいものを表したり,同じ動作の繰り返しを表したりする語尾がありますから, 無理に「とんでも語源学」を適用しないで,そんなものと考えるのが良いと思います.

    では,前置きが長くなりましたが,g の音の仲間を使った覚え方をいくつか書きます.

    まずは,結構気付きにくい g (独) ↔ y (英) から.

    g (独) ↔ y (英)
    ドイツ語意味など
    gelba. 黄色い (yellow) .
    こじつけに聞こえるかもしれませんが,L の 光の意味ですね.lamp (英,ランプ)とかは -mp- は b と音は近いです. 後で,図を描きますが,m は b の「鼻音化」です.ge- の前綴りがついて いますので,「光った」という意味かもしれません. gold (英), Geld (独) も光るものですね.
    gesternadv. 昨日 (yesterday).
    gestern の後ろの部分は Stern m 星 ですが,もともと恒星は「動かない」「固定した」とか いう意味の語から来ているので,ge- を付けて,昨日に確定した と言っているのかもしれません.
    gähnenvi. あくびをする (yawn)
    これも ge- がついたものと思って,後ろの単語の姿を追うと, ahnen になりますが,これは「予感する」で,あまり,ge-が付いても 「あくび」とはつながりません.残念賞で,gähnen あくびをする, ahnen 予感する,を両方覚えてしまうというのもありかもしれません.

    まあ,g (独) ↔ y (英) だけでなく,独英どちらも半母音の対もありますけどね.

    j (独) ↔ y (英)
    ドイツ語意味など
    Jahrn. year
    Jaadv. yes
    Junga. young
    Jugendf. youth (どちらも Ju-, you- の直後に n はないことに注意)

    g (独) ↔ y (英) の対応は,sagen (独) ↔ say (英) のように語頭でない部分の対応も沢山ありますが, これらは全体が似ているのでわかりやすいですよね.

    次は,ch (独) ⇔ gh (英) です.

    ch (独) ⇔ gh (英)
    ドイツ語意味など
    wichtiga. 重要な (weight (英))
    lichta. 明るい (light (英))
    leuchtenvi. 光り輝く
    leichta. 軽い (light (英))

    いくつかの補足をしておきます.

    1. -t
      過去分詞や名詞を作る語尾が来ると,前の子音は,無声音化/摩擦音化します. したがって,その前の形を想像するとき,有声音化/破裂音化を考えてみたら良いと 思います.それからいくと
      wichtig -> wig, weg
      なので,ラテン語の語根 -vey- (con-vey 運ぶ) やドイツ語の Weg (道)が 思い起こされます.車は Wagen ですし.「重い」というのは,運ぶのが大変な状態でしょうか,あるいは, 運ぶことの名詞化でしょうか.この -weg-, -vey-, -vec- など v-母音-g の語根に関係する語は,英語,ドイツ語,フランス語などで 結構出てきますから覚えておいた方が良いです.

    2. legen
      上 の L のところで書きましたが legen は「置く」という意味ですね. これの後ろに -t をつけて 直前の音が g -> ch と変化するとともに, 過去分詞の意味合いを加えて,「置かれた」とかあるいは「持ち上げられた」と いう状況を考えると leicht (軽い)をイメージしやすいと思います.

    3. 単語の先頭の子音
      前にも述べましたが,slide (英)すべる, glide (英) 滑空する,など,どちらも ゆっくり流れるような動きで,最初の子音があまり意味を 持ってないと思われる単語が沢山見つかります.これらは前つづりの成れの果て で,強めの意味(ex- 英) や完了の意味(ge-)を加えると考えると意味への 連想が効きます.あくまで意味を想像する助けですが.

    g の仲間に関しては,もっと沢山あります.ここでは,少しずつ記憶できる範囲で ノウハウを書いていこうと思います.皆さんも辞書を眺めてご自分で語の意味と形を 比較して楽しむとよいと思います.

    ここに書いたことは,あくまで記憶を助けるための連想のための説明で, 言語学的な主張ではないことを注意してください.

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    2016年7月19日の資料をもとに結構加筆 2019.06.24 (月)
    
    

    (幕間)印欧祖語

    インド・ヨーロッパ祖語とも言います.インド・ヨーロッパの言語が一つの語族を なすという扱いは一般的になっていますが,それらの共通の祖先(祖語)として 理論的に構築された仮説上の言語を印欧祖語と言います.英語で Proto-Indo-European と 言いますので,PIE と略されたりします.理論上の言語ですので,それその ものの文献的な資料を持っている訳でなく, 他の言語の形から想像されたもので,その(理論上の)語根は先頭に * を 付けて記述されます.一応,言っておきますと,印欧祖語は,単音節位の原始的な言語でなく,我々が今日使っている くらいの多くの語彙と複雑な文法を持つ言語が想定されています(日本人の「我々」でなく西洋諸国の 人たちの「我々」ですね.日本人の我々は今日,日本語を使っていますから,あまり印欧祖語には 似ていません).

    American Heritage など,辞書によっては印欧祖語の形が記述されているものもありますが, 各英単語の印欧祖語の形を調べるには,参考文献・参考サイトのところに書いた Online Etymology Dictionary が秀悦です.

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    (幕間)子音の関係の整理

    ここで今まで覚えた子音の関係を全部整理しておきましょう.図では,発音する部位が 唇,歯茎の裏側,硬口蓋から軟口蓋の部分ごとに,無声化,摩擦化でそれぞれダイヤモンドを 構成します.また,g のところでは半母音化/母音化がありました.それから,説明しませんでしたが,各部位で鼻に抜ける鼻音化があります.b は m に,d は n に,g は ng に 対応します.これだけはしっかり頭に入れておいてください.

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  5. 「aus は out 」 の巻

    今回は,前綴りをいくつか勉強します.単独で副詞や前置詞になる大物ばかりですが, まず,そういうところから慣れていきましょう.

    前綴りのついた単語は,前綴りと語根を英語にしてひっくりかえすと意味を取りやすいです.

    例: aus | legen = lay (legen) out (aus) = 広げる,並べる

    とりあえず,主要な前綴りを列挙します.

    良く使われる前綴り
    ドイツ語ヒント意味など
    aboffadv. 離れて,去って (off), 英語の前綴りのabs- も同根.
    「aber しかし」は ab の比較級から.
    「Abend = m. 夕方」は太陽が去っていく(off)からなんでしょうかね.
    「ab|schließen = close off = 閉鎖する」.schließen は最初にやりました.
    anonprep. adv. ~へ (to), ~で (at)
    語源的には on と同根らしいけど,意味を取るときは to に 置き換えるのがよさそう.
    「an|fahren = go to = 着く」
    aufup, overprep. adv. ~の上へ (over, up)
    "au" は長い音で up と対応しにくいし,over は後ろに -er がついているのであまり対応しにくいですけど, とにかく up, over と覚えてしまいましょう.
    auss->t, a->oprep. adv. (中から)外へ (out)
    「Ausland = n. 外国」,「aus|drücken=press(drücken) out = 表現する = express (ex- はラテン語の前綴りで out)」
    durchd->th, ch->ghprep. ~を通って(through)
    一回やりましたけど,重要な語は何度でも.
    「durch|fahren = go through = 通過する,通り過ぎる」
    ein-#e を取ってみて ~の中へ (in, into)を表す接頭辞
    「ein|fahren = go in = (乗り物で) 入る,(乗り物に) 入る」, 「ein|drücken = press in = impress = 印象付ける」
    ent-anti-分離を表す非分離の接頭辞 (anti-(against)/off), 後ろの音が f などで emp- の形になることもある
    「entbinden = bind off = 解く,免除する」, 「Entbindung = f. 免除,解除」, 「Entshuldigen Sie! = ごめんなさい」, これは絵を描きましたので下で説明します.
    mitmedia, middleprep. ~と,~を使って (with)
    ちょっと苦しいかもしれませんが,「中間にあるもの = media, middle」の m と d(t) から連想しましょうか. ギリシャ語の 「meta 間に,一緒に」と同語源だそうです. 「Mitte (独) f. 中央」,「Mittel (独) n. 手段(-el は接尾語)」,ですから そう遠くないかもしれません.
    「mit|bringen = bring with = 持ってくる」
    「mit|nehmen = take with = 連れて行く」
    nehmen= take は次の nach = toward と音が近いですね. 意味も何かへの接近を表しているので連想が利く範囲のところに ありそうです.
    nach#next, neighborprep. ~へ,~の後から(to, toward, after)
    「nach|denken = think after = 熟考する,反省する」
    unterunderprep. adv. ~の下へ(under, down)
    「unter|brechen = break down = 妨げる,遮る,中断する」
    -ch- と -k- の対応に注意
    vor-v -> f前へを表す前綴り
    「vorsetzen = set forward = 前に置く,提出する」

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    Entschuldigen Sie!

    上の表の ent- のところに Entschuldigen Sie = Excuse me! (英) があるんですが,これは この間,つい,絵を描いてしまいましたので,上の表とは別に説明します.

    ent- は上に書いたように,分離を表す接頭辞ですが,schuldigen は,「罪を背負う」と 言う意味です.-igen は形容詞 -ig がさらに動詞化したものですから,元の形は

    Schuld f. 責任,罪
    です.この単語は英語に形と意味が似た単語があります. should(しなければならない)です.これらは同語源です. 絵では「肩(shoulder)」にも掛けているように見えますが,これはやりすぎで, shoulder(英語) は語源不詳みたいです.紛らわしくて申し訳ありません.

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    [作業中のメモ]

    次の前綴りは次回の動詞と組み合わせるのに出てきますのでメモ書きだけ書いておきます.
    1. er-/ur-
      結果,終着を表す接頭辞.ur- がアクセントを失ってできた形.aus と同根.
      集合論で,集合で無い要素のことをアトムという.このアトムのドイツ語対応語はUrelement = Ur-Element.「∈ を繰り返し取っていき,もう要素が取れなくなった究極の要素」のことか.

    2. um
      prep. (4格) まわりに; 時に;
      [ラ] ambi-, [ギ] amphi と同根.後ろの部分は bei, beide と同根とのことですが,ドイツ語の方にその後ろの部分が見えないので この説明は何だという気がします.

    3. bei
      prep. (3格) ~の近くに,~のもとで,~の際に.bei- の弱形が接頭辞 be-
    4. beide
      a. pronoun. 両方の both

    5. zer-
      分解を表す接頭辞.zerbrechen = 砕く.zxxx + er の短縮形か.

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    (幕間)子音の推移

    Wikipedia の「第二次子音推移」を見ると,次のような体系的な子音変化が起こったとのことです.

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  6. 「よく使われる動詞(1)」の巻

    今回は,いろいろな前綴りと組み合わせてよく使われる動詞を覚えます.gehen, kommen など 英語とにていて,当たり前にすぐ覚えられるものは除きます.

    良く使われる動詞で英語と似てないもの
    ドイツ語ヒント意味など
    nehmen# nach (独), neighbor (英), 接近のイメージ vt. 取る(take),古い英語には nimman (取る) があったらしいけど, take に追い出されたとか.
    ab|nehmen = take off = 取り去る,脱ぐ
    an|nehmen = take to ~ = ~を受け取る
    auf|nehmen = take ip = 取り上げる,受け入れる
    teil|nehmen = take part = 参加する
    unter|nehmen = take under = 企てる
    zu|nehmen = take to = 増加する
    steigeng -> yで stayvt. 登る (climb),乗る (ride)
    ab|steigen = climb off = 降りる
    auf|steigen = climb up = 登る
    ein|steigen = ride in = 乗る
    um|steigen = ride around = 乗り換える
    ziehenZug (列車) から連想vt. 引く (draw)
    an|ziehen = draw to = 着物を着る,引き付ける
    aus|ziehen = draw out = 着物を脱ぐ
    erziehen = draw out = 教育する (c.f. educate は lead out の意)
    vor|ziehen = draw forward = 好む,優先する
    scheiden# scissor はさみ と子音の並びは同じですねvt. 分ける,分離する,切る (cut)
    entscheiden = cut away 決定する (decide = de(away) + cide(cut) にならった造語)
    unterscheiden = cut down = 区別する
    verscheiden = cut forward = 亡くなる
    suchenseekvt. 探す (seek, search)
    auf|suchen = search up = 訪れる
    untersuchen = search under = 調査する
    versuchen = search forward = 試す,やってみる
    brechenbreakvt. 壊す (break)
    unterbrechen = break down = 妨げる,遮る
    zerbrechen = break away = 壊してしまう
    fangen# finger から連想vt. 掴む (catch)
    an|fangen = catch to = 始める
    empfangen = catch against = 迎える (emp- は ent- (anti-) と同じ)
    holenhale 引き寄せるvt. 取りに行く,連れに行く(get)
    ab|holen = get off = 取って来る
    erholen = get out = 休養する
    kaufencapture, # 買うふぇんvt. 買う (buy).....
    ein|kaufen = buy in = 買い入れる
    verkaufen = buy forward = 売る
    stellenstallvt. 立てる,置く,据える (stall).....
    her|stellen = 製造する
    vor|stellen = 紹介する

    前綴りと動詞を組み合わせたときの意味は,なかなか承服しがたいものが多いですね (^^;). (この表はもう少し承服しやすいような英単語を選び出す工夫が必要かもしれません.そのうち)

    このページはパイロット版ですので,まだ,いろいろ試行錯誤で修正するかもしれません. それと,繰り返すようですが,言語学的な話ではなく,記憶のための方便と割り切ってお読みください.

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    2019.06.25 (火)

    
    
  7. 短い物語を読みながらドイツ語単語を覚える

    パラパラと散発的に単語を覚えていても,ドイツ語の単語力がついたような気がしませんので ここでは何か短い物語をよみながら,そこに出てくる単語をどうにかして 覚えて,役に立った気になろうと思います.昔の著作権の切れたグリム童話の最初の お話「かえるの王様,または,鉄のハインリッヒ」のドイツ語テキストが ドイツ語版 wikipedia にありましたので,これをやってみましょう.

    とりあえず,

    Der Froschkönig oder der eiserne Heinrich (1857)

    をこちらにコピーさせていただきました.

    文法など,単語の覚え方以外のことについては,申し訳ありませんが解説しません.というか 私には到底出来ません.さらに,次の二つの注意(言い訳)を書いておきます.

    注意(言い訳)

    段落へのリンク

    1. 第 1 段落 In den alten Zeiten, wo das Wünschen noch geholfen hat ...
      とても美しい一番下のお姫様は近くの森の泉のそばで
      お気に入りの金のボールで遊んでいますが...

    2. 第 2 段落 Nun trug es sich einmal zu, daß die goldene Kugel der Königstochter ...
    3. 第 3 段落 Der Frosch antwortete „deine Kleider, deine Perlen und Edelsteine ...
    4. 第 4 段落 Der Frosch, als er die Zusage erhalten hatte, tauchte ...
    5. 第 5 段落 Am andern Tage, als sie mit dem König und allen Hofleuten ...
      次の日,お姫様がみんなと一緒にご飯を食べていると...
    6. 第 6 段落 „Königstochter, jüngste, ...
    7. 第 7 段落 Da sagte der König „was du versprochen hast, ...
    8. 第 8 段落 Als er aber herab fiel, war er kein Frosch, sondern ein Königssohn ...
    9. 第 9 段落 „Heinrich, der Wagen bricht.“ ...
    10. 第 10 段落 Noch einmal und noch einmal krachte es auf dem Weg, ...

    目次へ

    Der Froschkönig oder der eiserne Heinrich.

    In den alten Zeiten, wo das Wünschen noch geholfen hat, lebte ein König, dessen Töchter waren alle schön, aber die jüngste war so schön, daß die Sonne selber, die doch so vieles gesehen hat, sich verwunderte so oft sie ihr ins Gesicht schien. Nahe bei dem Schlosse des Königs lag ein großer dunkler Wald, und in dem Walde unter einer alten Linde war ein Brunnen: wenn nun der Tag recht heiß war, so ging das Königskind hinaus in den Wald und setzte sich an den Rand des kühlen Brunnens: und wenn sie Langeweile hatte, so nahm sie eine goldene Kugel, warf sie in die Höhe und fieng sie wieder; und das war ihr liebstes Spielwerk.

    まず,この段落から,ドイツ語単語を語源などと関係づけて覚えていきましょう. 最初はほんの基本的な単語もやります.すでに上で学習したものも再度確認の ためにやっていきます.そうして列挙したのが下の単語の列です.うん,たった これだけの段落に,ずいぶん沢山ありますね.まあ,ゆっくりやっていきましょう.

    1. Frosch m. frog, 蛙. Fro- ですから,如何にも「前に跳びそうな」語の形をしていますね.
    2. König m. king とは,母音が大分違いますけど,同語源の語です. kin が同じ血族という意味です.印欧祖語の *gene- が「生を与える」という意味だとか. 数学が好きな人には ケーニッヒのレンマ(The lemma of König)とか Königberg の 橋とかでなじみが深い単語かもしれません.
    3. oder conj. または.or (英).古ドでは odo. これに他の似た ような種類の単語との類似で -r がついたとのこと.
    4. eisern a. 「鉄の」ですね.ドイツ語で鉄は Eisen n. なのに, なんで r が入っているか私にはよくわかりませんが,英語では iron で こっちに r が入っているので良いことにしましょうか.
    5. alt a. old (英). 形が似ているのでこれ以上追及するのは無駄と思うかも しれませんが,al- の部分が「成長する」を表していて,それに過去分詞の 接尾辞 -t がついたものです.ここまで理解しておくと後で al- からの派生語が 現れたとき,記憶が確かになりますし,old が「歳を取った」という理由も納得が 行きます.
    6. Zeit f. 時(time). PIE で *dei- *di- が分けるという意味 と語源小辞典には書いてあります.*di- が「分ける」というのは, 「ジクロロベンジン」のように, di- に 2 という意味がありますし,ラテン語の前綴りの de- は away の意味なので, うなずけるのですが,そこから Zeit への 長い旅立ちがわかりません.というか,記憶の助けになりません. t (英) - z (独) ですから,もとの形は t--t/d の ような形のはずです.英語で対応するのは 「tide 潮」だそうです. これだったら少しは記憶の助けになるかもしれません.

    7. Wünsch m. 希望. wish (英) と連想して覚えやすいですよね.
    8. noch adv. まだ.語源小辞典には 「nun (今) + h」 だとか書いてある. で,nun には13世紀から -n が付くようになったのでそれ以前は nu だとか.
    9. geholfenhelfen vt 助ける. vi. 役に立つ,有効である.これは help からすぐですね. 「役に立つ,有効である」という意味は押さえておく必要がありそうですが.
    10. lebteleben vi. live
    11. Töchter pl. ← Tochter f. daughter
    12. schön a. 美しい.shine (英語)
    13. aber conj. しかし.ab(off) の比較級.
    14. jüngste (最上級) ← jüng a. 若い.「young (英) a. 若い」
    15. Sonne f 太陽 son (英) 語源小辞典には印欧祖語語根 *su に形成素 -n が ついたものとか書いてある.これと並んで -l という形成もあるとか. フランス語の Le soleil とかですかね.
    16. selber pron. 自分(自身).self (英).selp (中期ドイツ語) の 強変化男性1格が固定化したものとのこと.
    17. doch adv. though (英)
    18. vielesfiel a. 多くの.
      ラテン語系の pol- と同根.voll も同根. おっ! voll や pol- とつながるのはこれは耳寄りな情報ですね. 意味と音で近いし,沢山,関連する単語がありますし.
    19. verwunderteverwundern vt. 驚かせる.
      ver + wundern .Wunder n. 奇跡,不思議. wonder (英).ということは, verwundern = ver + wundern = make (someone) wonder forward(ver much?) のように考えたら,連想が利く記憶になるかなと思います.
    20. oft adv. often (英).英語も oft という形があったみたい.英語の オンライン英語語源辞典には語源不詳と書いてある.
    21. Gesicht n. 顔,顔立ち.ge + sehen の過去分詞 = 見られるもの = 顔
    22. schienscheinen vi. 輝く.shine (英)

      もとの文章では,ここでいったんピリオドが入ってますね.あー,疲れた.

    23. nahe a. 近い. prep. ... の近くへ. near (英).「nehmen 取る」とか 「nechst 次の」とか,「n + 母音 + gの仲間 は,なんとなく, 対象物への接近の感じがあります.neg- は否定なんですが,これも正面からの 接近と考えれば....まあ,こじつけですね.
    24. bei prep.(3格) ~の近くに,~の周りに.
      by (英語), ambi- (ラテン語) の前半は um と同語源,後半はこのbei と同語源.
    25. Schlosse 3格 ← Schloß n 錠,城.おー! でてきましたね. このページで 一番最初に勉強した城ですね.close と同根ですが, 城(なまって,しゅろ)と覚えても良いかもしれません.

      追記:2020.11.07 (土)
      これが Schloß からSchlosse と,語尾に -e が付いているのは, 名詞の古い格変化みたいです.単数の男性・中性名詞で3格に -e の語尾を つけることがあるらしいのですが,現在は殆ど省略されるみたいです. これは日本のコンパイラの草分けみたいな I. NKT 先生に,このサイトを 紹介したときに聞かれて,今日,調べました.私も気になっていたのですが 放っておいたものです.それまで, ここの見出しは Schlosse ← Schloß となっていて,「3格」は 入っていませんでした.

      「基礎ドイツ語文法ハンドブック,岡田公夫 清野智昭, 2004」によると このような男性・中性名詞の3格の -e は,20世紀前半の小説などには普通に見られて,今でも, nach Hause 「家へ」などに残っているとのことです.

    26. lagliegen vi 横たわる.legen の自動詞の対応語ですね. 以前, L で始まる語の大きな意味として「置く」があるという 怪しげな説を上げました.
    27. großergroß a. 大きい.英語の grow, great, grandと同語源.
    28. dunklerdunkel a. 暗い.「dank (英) 湿った」と同語源.
    29. Wald m. 森.
      「wold (英語) 有れた土地」と同語源と語源小辞典に書いてありますが, wold はあまりなじみがない単語ですので,wild (英) と連想しておきましょうか.オンライン英語語源辞典には,wild の方は語源不詳だが,たぶん,wold と関係あるんじゃないかと書かれているので.

    30. Walde 3格 ← Wald m. 森.3格の -e は Schlosseの後半の追記を参照.

    31. Linde f. 菩提樹.一応,「lind (独) a. しなやかな」と同語源だそうです.
    32. Brunnen m. 泉.原義は「沸き立つもの」で, 「brauen (独) 醸造する」と同語源だそうです.R の「とんでも言語学」は まだやりませんでした.そのうちやろうかと思いますが,「醸造する」の 英語が brew (英) なので,まずは,それと連想させて覚えたらよいかと思います.
    33. nun adv. 今(now (英)).さきに,noch のところで,nu に形成素の -n が付いたと言いました.
    34. recht a. 右の,正しい,ちょうど.right (英).
      これは英語の単語を覚えるときさんざんやる reg- の語根と同じですね. reg- は印欧語の全般に現れる「統治する」とか「征服する」とか 「平定する」という意味の語根です.結構,荒々しいイメージです. 「rich (英) 豊か」は征服者の富の状態ですね. ものすごく沢山関連語がありますので,もし,ご存知なければ, 英語の語源関係の本を調べるか, オンライン英語語源辞典で right を調べて,そこから関連語を探して見ると 良いと思います.ここでも項目を起こしてやるかもしれません.
    35. heiß a. 熱い,暑い.母音が大分違いますが hot (英) と同語源です. 後ろの,ß と t の違いは第二次子音推移の t→ss と符合しますね.
    36. Kind n. こども.「Kindergarten (独) 幼稚園」, 「Kinderbuch (独) 絵本」とかいうドイツ語が日本語化していますので 覚えやすいと思います.これは König のときに説明した *gene- と同語源です.
    37. hinaus adv. (中から)外へ.「hin- (話者から)あちらの方へ」. 「aus (独) = out (英)」.
    38. setztesetzen vt. 座らせる.set (英).
    39. Rand m. へり,ふち,周辺部.「Rahmen (独) m 枠」と同じ語根 *rem- からとのこと.
    40. kühl a. 涼しい,冷たい.kool (英).印欧祖語の語根 「*gel- 凍る,寒い」.「kalt (独) a. 冷たい」も同根.
    41. Langeweile f. 退屈.= lange (英 long) + weile (英 while)
    42. nahmnehmen
    43. Kugel f. まり,球.語源は「*geu- 曲げる」からだそうだが, 連想に必要な関連語の数が少ないのであまり役にたたない.これは このまま覚えた方がよさそうです.
    44. warfwerfen vt. 投げる.「warp (英) ゆがめる」が同語源. 印欧祖語「*wer- まわす」
    45. Höhe f. 高さ.「hoch (独) 高い」 から.音から考えると, 「h 母音 g-」で持ち上げるというような単語が見つかりそうですね. 「Hügel m. 丘(hill)」,「huge (英語) 大きい」が見つかりますが, 語源的な関連がある語かどうかは分かりません.
    46. fieng = fingfangen vt 捕らえる,捕獲する. ラテン語 「pangere 掴む」と同語源.
    47. wieder adv. 再び.「wider (独)」と同じ語だったが,17世紀に wider は「反」,wieder は「返る」(元に戻って再び)に意味が 固定されたとのこと(語源小辞典).「*wi-」 は「別々に」という意味.
    48. Spielwerk = Spiel(play (英)) + Werk (work(英)) 遊び. 「Spiel n. 遊び(play) ← spielen vi」は,語源小辞典によると 語源不詳らしい.ゲルマン語でも,splielen は,play (英),lege (デンマーク), leke (ノルウェイ)と異なっていると書いてあるが,play の y を g と とると,l-g の部分は共通項のような((独)にはないが).

    ふぅ,やっと終わりました.たかが,1段落でこんなにあるとは思いませんでした. そのうち,ここの解説をさらに掘り下げたり,あるいは,ここで覚えた単語を核にして さらに別の単語を覚えたりしたいなとは思います.

    でも当面は出てきた単語の由来を知ったり,あるいは,記憶に残りやすい形にして 覚えていくことに専念しますか.でも次の段落はちょっと長いですね.少し分けますか.

    段落へのリンク
    2019.06.27 (木)
    
    

    Nun trug es sich einmal zu, daß die goldene Kugel der Königstochter nicht in ihr Händchen fiel, das sie in die Höhe gehalten hatte, sondern vorbei auf die Erde schlug und geradezu ins Wasser hinein rollte. Die Königstochter folgte ihr mit den Augen nach, aber die Kugel verschwand, und der Brunnen war tief, so tief daß man keinen Grund sah. Da fieng sie an zu weinen und weinte immer lauter und konnte sich gar nicht trösten. Und wie sie so klagte, rief ihr jemand zu „was hast du vor, Königstochter, du schreist ja daß sich ein Stein erbarmen möchte.“ Sie sah sich um, woher die Stimme käme, da erblickte sie einen Frosch, der seinen dicken häßlichen Kopf aus dem Wasser streckte. „Ach, du bists, alter Wasserpatscher,“ sagte sie, „ich weine über meine goldene Kugel, die mir in den Brunnen hinab gefallen ist.“ „Sei still und weine nicht “, antwortete der Frosch, „ich kann wohl Rath [2] schaffen, aber was gibst du mir, wenn ich dein Spielwerk wieder heraufhole“? „Was du haben willst, lieber Frosch,“ sagte sie, „meine Kleider, meine Perlen und Edelsteine, auch noch die goldene Krone, die ich trage.“ Der Frosch antwortete „deine Kleider, deine Perlen und Edelsteine, und deine goldene Krone, die mag ich nicht: aber wenn du mich lieb haben willst, und ich soll dein Geselle und Spielkamerad sein, an deinem Tischlein neben dir sitzen, von deinem goldenen Tellerlein essen, aus deinem Becherlein trinken, in deinem Bettlein schlafen: wenn du mir das versprichst, so will ich hinunter steigen und dir die goldene Kugel wieder herauf holen.“ „Ach ja,“ sagte sie, „ich verspreche dir alles, was du willst, wenn du mir nur die Kugel wieder bringst.“ Sie dachte aber „was der einfältige Frosch schwätzt, der sitzt im Wasser bei seines Gleichen und quackt, und kann keines Menschen Geselle sein.“

    これを以下のように3つに分けました.

    Nun trug es sich einmal zu, daß die goldene Kugel der Königstochter nicht in ihr Händchen fiel, das sie in die Höhe gehalten hatte, sondern vorbei auf die Erde schlug und geradezu ins Wasser hinein rollte. Die Königstochter folgte ihr mit den Augen nach, aber die Kugel verschwand, und der Brunnen war tief, so tief daß man keinen Grund sah. Da fieng sie an zu weinen und weinte immer lauter und konnte sich gar nicht trösten.

    1. zutrugzu|tragen vt. 運んでくる.
      tragen vt. 持ち運ぶ.「draw (英) 運ぶ」
    2. einmal adv. 一度.「-mal (数詞につけて)回,倍」
    3. Händchen n. 小さい手.-chen 縮小語尾.小ささ,愛らしさ,親しみの意味を追加.
    4. fiel p. ← fallen vi. 落ちる. 「fall (英) 落ちる」
    5. gehalten pp. ← halten vt. 持っている,掴んでいる.「hold (英)」と同語源.
    6. sondern conj. ~ではなくて.語源はあまり探れません.中期ドイツ語で 「~なしに,~以外に,~の脇に」といった似た単語が見られます.
    7. vorbei adv. 傍を通って.vor + bei = by forward.
    8. Erde f. 地球,大地.「earch (英) 地球」と同語源.
    9. schlug p. ← schlagen vt. 打つ,殴る,打ち負かす.
      前にやった L の怪しげな意味のところに出ましたね.
    10. geradezu adv. まさしく.gerade + zu.「gerade (独) a. まっすぐな, adv. ちょうど(just).」は,rade- の部分は「数」(rational number)の意. 「rasch (独) 迅速な」,「rash (英) 性急な」,「rather (英) むしろ」と 同根とのこと.私的には 「radiate 放射する」が過去分詞になって,それに zu が付いたくらいの連想もあり得るかなと思います.まあ,gerade は just と 訳すとぴったりくるような.

    11. Wasser n. 水.water (英).印欧語根 *wed-, *wod-, *ud-.
    12. hinein adv. あちらの中へ.hin (there) + ein (in). 「hin (独) adv. あちらに,去って」は,「hier (独) ここに」, 「her (独) こちらに」と同根.
    13. rollte p. ← rollen vi. 転がる,回転しながら進む.roll (英).
    14. folgtefolgen vi. ついて行く,従う.follow (英).
      nach|folgen = follow toward = 後を追ってついて行く.
    15. Auge n. 目.g - y で「eye (英)」 と 符合することに注意.
    16. verschwand p. ← verschwinden vi. 見えなくなる,消える.
      ver + schwinden.「schwinden vi. 減少する,色があせる」.関係があるか どうかは分かりませんが,「(1)winden vi. 風が吹く」, 「(2)winden vi. 身をくねらせる,曲がりくねる, 巻き付ける(bind (英))」もあげておきましょう.
    17. tief a. 深い.t(ドイツ語)-d(英語) のところで勉強しましたね.
    18. Grund m. 土地,地面,基礎,底.ground (英).ゲルマン語特有の語とか.
    19. sah p. ← sehen vt. 見る.see (英).ゲルマン語特有. オンライン英語語源辞典で see を調べると,*sekw- (1) "to follow" と 書いてあります.sequel 参照だそうです.ということは,se-の後ろに g の 仲間があった形の可能性があるということですね(sehen の h が単に長音の 記号なのかどうか).
    20. weinen vi. 泣く.語源小辞典によると 「weh (独) 痛い,悲しい(感嘆子,自然の発声から)」から,「wenig (独) a. 少ない(悲しいほど少ない)」も 同語源と書いてあるが,本当にそうなんだろうか.心なしか,西洋の言葉で オノマトペが直接感じられる単語が少ないような気がするので,私は,若干,本当かな という疑問が浮かびます.でも,単語記憶のために使うことにしましょう. 信じているかどうかと,使う使わないは別です. ちなみに,英語にも 「whine (英) vi 泣く」と いう単語があるんですよね.

      実は私,定年の5年前に自己都合退職したので,退職金が 泣くほど少なかったんですよ.まさに,wehnig ですよ.これは本当の話.

    21. immer adv. いつも.語源小辞典によると, je (つねに) + mehr (より多く)とか.
    22. lauterlaut a. 声(音)の大きい.loud (英).
      L の怪しげな意味のところで,L の主要な意味は, 「置く」,「流れる」,「光る,輝く」といいましたが,「(音が)響く」も 結構あるんですよね.一応,自分の中では「輝く」からの派生として 位置付けていますが.
    23. gar adv. 全然.
      語源小辞典によると,古期ドイツ語で 「garo (料理が)できあがって」. 印欧祖語の語根「*gwher- 熱い」に由来する動詞「料理する」の 過去分詞とか.それが何で「全然」になるんだか.
    24. trösten vi. 慰める,元気づける.
      「Trost m. 慰め,慰安」から.「trust (英) 信頼」.うん, これは連想しやすい英単語ですね.

      少しシチュエーションが分かりにくいですね.

    段落へのリンク
    2019.06.28 (金)

    Und wie sie so klagte, rief ihr jemand zu „was hast du vor, Königstochter, du schreist ja daß sich ein Stein erbarmen möchte.“ Sie sah sich um, woher die Stimme käme, da erblickte sie einen Frosch, der seinen dicken häßlichen Kopf aus dem Wasser streckte. „Ach, du bists, alter Wasserpatscher,“ sagte sie, „ich weine über meine goldene Kugel, die mir in den Brunnen hinab gefallen ist.“ „Sei still und weine nicht “, antwortete der Frosch, „ich kann wohl Rath [2] schaffen, aber was gibst du mir, wenn ich dein Spielwerk wieder heraufhole“? „Was du haben willst, lieber Frosch,“ sagte sie, „meine Kleider, meine Perlen und Edelsteine, auch noch die goldene Krone, die ich trage.“

    1. klagteklagen vi. (苦痛,苦悩を) 嘆き訴える.
      「Klage f 嘆き,悲嘆[の声]」からだとか.で,語源小辞典によると Klage は擬音語起源と書いてあるが,これも私はあまり納得できない. 西洋の言葉はあまり擬音説に頼りたくないのだ. 私の とんでも語源学では L は,「光り輝く」の 聴覚的な拡張で,「音が響く」という意味もあるので,前に,ge- が ついてしっかり訴えている とか,あるいは,「置くの L」 で,置かれてしまって不満が出ている状態とか こじつけは結構ありそうな気がする.でも,なんとか強烈なイメージで この単語を覚えないと行けないとすれば,「クラーゲが悲嘆している」とか どうだろうか?

    2. rief p. ← rufen vi. vt. 叫ぶ,呼ぶ.
      語源小辞典では「Ruhm m. 名声」と同根とのこと.擬音語起源か?と 書いてあります.まあ,記憶のためには, 語源的なつながりがあるかどうかは別として, 「rumor (英) うわさ」から連想すればよいでしょうか.また, 「Beruf m. 職業」というドイツ語の名前をつけたリクルート社の 就職情報の雑誌がありましたから,そこから覚えてもよいですね. この単語は神から人間への呼びかけの意味でルターにより,ラテン語からの 翻訳の時に作られた造語みたいです.
    3. jemand pron. (誰か)ある人.古ドイツ語 io(常に) + man (人).-d は後期になって付いた.
    4. schreistschreien vi. vt. 叫ぶ.うん,なんか「叫ぶ」が 続いているような.これが我々に一番なじみのある「叫ぶ」ですね. 「scream (英) 叫ぶ」,最初の s- が取れて,「cry (英) 叫ぶ」.s- は 要らないなら,「叫ぶ」の意味を支えている部分は,「-cr-」の部分で しょうかね.それで,-c- も接頭辞だったりすると,-r- の部分という ことになります.そうすると上の rufen に関係があるのかなという 勘ぐりが始まります.でも,-r- が「叫ぶ」だと 「rennen vi 走る」, 「run (英) 走る」はどうなるのだということになります.以上,とんでも 語源学の妄想でした.とにかく,ここは,scream (英)cry (英) としっかり結び付けて覚えましょう.

    5. erbarmen vt. 同情の気持ちを起こさせる.(再帰動詞で)同情する.
      語源小辞典にはありませんでしたので,私の覚え方の工夫を書きます. 「arm a. 貧しい」です.er + b(e)- + arm + en で,「(究極の貧乏状態に よって)同情の気持ちを起こさせる」というのはどうでしょう? er- は終着の意味を表す接頭辞でしたので「究極の」と置いてみました. 一応,そこの文章を取って来て訳しておきます.
      daß sich ein Stein erbarmen möchte
      石だって気の毒に思うくらいに
    6. möchte p. ← mögen aux. may (英).
      m-g は「力」を表す一連の語根がありますね.いつか整理しましょう. とりあえず,magic (英), max (英), mighty (英) などを挙げて おけば十分でしょうか.
    7. woher adv. どこから.wo (どこ) + her (こちらへ).
    8. Stimme f. 声,(選挙の)票.
      語源小辞典に載ってないので,ちょっと不確定ですが,探りを入れてみましょう. オンライン英語語源辞典で 「stimulate (英) vt. 刺激する」を調べてみます. これは,行為を起こさせる何かの動作を表し, ラテン語の stimulare "prick(刺す), goad(ヤギ), urge(駆り立てる)," から来ているそうです.ということで,「声」でも そういうものの一つかなと思って覚えることにします.まったく, 世に流通している説ではありませんので,ご注意ください.
    9. erblickteerblicken vt. みつける,発見する.
      blicken vi. 目を向ける,見る.語源小辞典には,look (英) と 同根と書いてある.英語で,b- が抜けたと思えば,それほど腹は立たないと思う.そういう例は,lucky (英) grücklich など多いので.
    10. dick a. thick (英).「Doch (独) は though (英)」 の巻で説明した単語.
    11. häßlichen a. 醜い.「Haß m 憎悪,敵意」=「hate (英) 憎悪」.動詞は「hassen vt. 憎む,嫌う」.ここらあたりは何か深いところでつながっている単語が多そうですね.
    12. Kopf m 頭.もともと,「cup (英) 盃」と同語源の語だが,16世紀に 元の語(で,今も)の 「Haupt n 頭」の代わりに用いられるようになったとのこと. んー? 字面を見ると,どちらも同語源の語じゃないかな? ちなみに, いま,辞書を引いている最中に「Haube f (婦人用の)ずきん」を見つけました. これも同語源の語ですね(きっと).グリム童話の赤ずきんちゃんは Rotkäppchen で,Haube ではありませんが,käppchen も同語源の語ですね.英語の capture (捕まえる) とか capital (首都),captain (船長) とかと同語源の語ですね.
    13. streckte p. ← strecken vi. (体あるいは体の一部分を)まっすぐ伸ばす.
    14. Wasserpatscher Wasser + patscher.「かえる」のことを 言っている.patschen vi. ぱちゃぱchと音を立てる.うん,これは 擬音語で良いと思います.
    15. sagte p. ← sagen vi. 言う.「say (英)」.
    16. antwortete p. ← antworten vi 答える,返事をする.
      answer (英). antworten = ant (against/to) worten (word).
    17. wohl adv. 良く,元気で.「well (英)」.
    18. Rath Rat m. 助言.「動詞 raten (独) vt. 忠告する」から. 「read (英)」. 原義は「配慮する」.英語にも「rede vt. 忠告する」が あるみたい.語源小辞典には,明確に書いては無かったけど, 「rationale (英) n. 合理性」とかと関係あるみたい.オンライン 英語語源辞典にはどちらも印欧祖語の語根「*re- "to reason, count")」から と書いてあるので.
    19. schaffen vt. 創造する,生み出す,創作する. 「shape (英) 形, 形作る」.ラテン語の 「scabere 削る」と同根. 「landscape (英) 風景」の -scape は,-ship の 意味で,shape を表します.
    20. über prep. adv. ~の上に,上に.up (英), over (英).
    21. hinab adv. 下方へ.hinab- (分離前綴り)(あちらの)下方へ. hin(from here) + ab (off).
    22. still a. 静かな.「stellen (独) vt. 置く」,「Stall (独) m. うまや,家畜小屋」と同根とのこと.
    23. gibst ← geben.
    24. heraufholen herauf|holen = herauf (up from there) + holen (行って取って来る)
      「holen (独) vt. 行って取って来る」は,「haler (仏) 船を岸に引く」, 「hale (英) vt. 引っ張る」に借用.
    25. lieber 「lieb a. 愛する,好きな」の比較級.adv. どちらかといえば,[よりも]むしろ~したい..
    26. Kleider pl. Kleid n. 婦人服,ドレス,衣服,制服. 「cloth (英) 服」に対応.子音の対応は最初の方に勉強した通りです. 原義は,服を粘土(Kley = clay (英))でなめしたものらしい.
    27. Perlen pl. Perle f. 真珠.「pearl (英)」
    28. Edelsteine m. 宝石.= edel(a. 高貴な) + Stein (stone (英) 石).
    29. auch adv. ~もまた,~でさえも.印欧祖語の語根「*auk- 増やす」. 「augment (英) 増やす」.
    30. Krone f. 冠,王冠. 「crown(英)」
    31. trage tragen vt. 持ち運ぶ.あれ,これは, zu|tragen ですでにやったのかな.もう一回やりますか.少し情報を加えて.

      同語源の単語に「draw (英) 引っ張る」があります.ちなみに,英語で,「d の仲間 r」の形でこのような 意味のある単語は数多く存在します.「腕をくいっとねじる様な動作」を伴う 行為を表す言葉が多いです.「throw (英) 投げる」,「drive (英) 駆動する」, 「drift (英) 漂流する」これは drive の過去分詞の形をしているので, 「強引に嵐などにdrive されたと」いう感じですかね.「trap (英) 罠にかけて 捕まえる」なんかも,「捕まえる」部分は draw のイメージがあります. 実は,先頭は 「d の仲間」にかぎりません.「scribe (英) 書く」も,もとは 引っかくという意味ですから,これも腕をくいっとねじる様な動作です. 実は「write (英) 書く」もそういう子音構成になっています.「grip (英) 握る」も そうですか.ここらあたりは, 私的には L の怪しげな意味のとんでも語源学に 続いて, R の怪しげな意味のとんでも語源 があるのですが, これはここに書くかどうかはまだ決めていません.こういうのはとにかく怪しいので 信頼性を低下する上にノウハウの公開にもなってしまうので,実は踏んだり蹴ったり の状況を招きかねないのです.でも,ドイツ語でも,d の仲間の次に r が来る 語,つまり, dr-, tr- ,あるいはd や t の後に多少母音が入ったものも含めて, このような意味を持つ単語は多いですから,辞書をずっと追って行くと ドイツ語単語の習得には役立つと思います.

    Der Frosch antwortete „deine Kleider, deine Perlen und Edelsteine, und deine goldene Krone, die mag ich nicht: aber wenn du mich lieb haben willst, und ich soll dein Geselle und Spielkamerad sein, an deinem Tischlein neben dir sitzen, von deinem goldenen Tellerlein essen, aus deinem Becherlein trinken, in deinem Bettlein schlafen: wenn du mir das versprichst, so will ich hinunter steigen und dir die goldene Kugel wieder herauf holen.“ „Ach ja,“ sagte sie, „ich verspreche dir alles, was du willst, wenn du mir nur die Kugel wieder bringst.“ Sie dachte aber „was der einfältige Frosch schwätzt, der sitzt im Wasser bei seines Gleichen und quackt, und kann keines Menschen Geselle sein.“

    1. mag 「mögen」の一人称. 「may (英)」.g ↔ y
    2. Geselle m. 職人.若い衆.友達.
      「同じ広間(Saal m. 広間,ホール)の者」から来ているらしい. 「Saal」 は 「salon (英)」を想像すれば覚えやすいでしょう.また, 「Gesellschaft f. 社会,利益社会」も一緒に覚えておくと記憶の ネットワークが出来てよいかもしれません.-schaft は,英語でいうと shaped で,つまり「形作られた」という接尾語です.
    3. Spielkamerad m. 遊び友達(の男の子)
      「Spiel n. 遊び」 + 「Kamerad m. 仲間」.「Kamera f. カメラ」が もともと「部屋」から来ているのですぐ上の 「Saal (広間)」→ 「Geselle (職人,友達)」と同じような作りの 語ですね.こちらはフランス語経由みたいです.

    4. neben prep. ~の隣に.
      もともと,(i)neben ← in ebani 同じように,一緒に. ebani は 「eben 平らな,ちょうど,even (英)」と同語源.
      という語源なんですが,覚え方はどうしましょう.in eben とかを ぼんやり思い浮かべるくらいですかね.
    5. sitzen vi. 座っている.sit (英)
    6. Tischlein n. 小型のテーブル.-lein は小さいものを表す接尾語.「Tisch m. 机」は Desk や Disc をイメージ.
    7. Tellerlein Teller + -lein.「Teller m. 皿」はロマス語かららしい. 原義は肉を切り分けるための板とのこと.「切る」なんだけど,これは身近なところに うまい同語源の単語を見つけられないので,とりあえず,このまま覚えるしかないかな.
    8. Becherlein 「Becher m. グラス」+ -lein.
      「bechern vi. 飲む」,「Becken n. 洗面器,ボール,プール,くぼ地」なので, 「B+母音+gの仲間」で,くぼ地か水関係か何かありそうな気はしますが, 今のところ分かりませんね.
    9. trinken vt. 飲む.「drink (英) t ↔ d」
    10. essen vt 食べる.「eat (英)」
    11. Bettlein 「Bett n. ベッド」.「 bed (英)」.
    12. schlafen vi. 眠る.sleep (英) .
    13. versprichst ← 「versprechen vt. 約束する」.
      versprechen = ver-(forward) + sprechen (speak)
      = speak forward 約束する.
      私は,sprechen (独) と speak (英) は r の有無がとても気になるのですが, 語の形は記憶に残る位に似てますので覚えるという意味では良しとしましょうか.
    14. hinunter hin (from here) + unter (under)
    15. steigen vi. 登る.「stay (英) g ↔ y」
      hinunter steigen で「潜る」でしょうね.
    16. herauf 向こうの(下方から)こちらの(上方)へ.her (to here) + auf (over)
    17. holen vt. 取りに行く,連れに行く(get)
      「hale (英)引き寄せる」
    18. nur adv. ただ~だけ.古独 niwäre = ni + wäre = ...が無ければ
    19. bringst ← bringen vt. 持ってくる.「bring (英)」
    20. dachte ← denken vi. 考える.「think (英)」.
    21. einfältige a. お人好しな.ein (one) + fältig (...倍の)」. -fältig は数詞の後について,「...倍の」,「...重の」といった形容詞を作る. ウムラウトの付かないものは「faltig a. 多くの折り目のある」. 動詞は 「falten vt. 紙などを折る」.ラテン語で,このような意味のある語根に 「pli- 折る」がある.「complicated 複雑な」.
    22. schwätzt ← schätzen (南部)= schwatzen vi 楽しくお喋りをする.
      すみません.私には語源は分かりません.
    23. Gleichen pl. 同類 ← gleich a. 同じ.「like (英) 似ている. 英語で先頭の g の脱落.k ↔ ch」.
    24. quackt ← quaken vi. (カエルが)クワクワと鳴く.これは擬音からだと思います.
    25. keines ← kein pron. 一つもない.nih (否定) + ein.
    26. Menschen ← Mensch m. 人間.「man (英)」
      2019.08.01 (木)

    
    

    Der Frosch, als er die Zusage erhalten hatte, tauchte seinen Kopf unter, sank hinab und über ein Weilchen kam er wieder herauf gerudert, hatte die Kugel im Maul und warf sie ins Gras. Die Königstochter war voll Freude, als sie ihr schönes Spielwerk wieder erblickte, hob es auf und sprang damit fort. „Warte, warte,“ rief der Frosch, „nimm mich mit, ich kann nicht so laufen wie du.“ Aber was half ihm daß er ihr sein quack quack so laut nachschrie als er konnte! sie hörte nicht darauf, eilte nach Haus und hatte bald den armen Frosch vergessen, der wieder in seinen Brunnen hinab steigen mußte.

    1. Zusage f. 約束.zu- (to) + Sage (say).
    2. erhalten vt. (返事,称賛,非難などを) もらう,受ける.
      er- (結果,終着を表す接頭語) + halten (hold).er-, ur- はどちらも 結果,終着を表す接頭語です.数学の例で申し訳ないですが, ある特殊な集合論(New Foundation)で,Urelement = ur- + Element という のがありますが,これは集合から要素を取ってみて,それが集合だったら, またその要素をとって,これを続けて,要素の取れないものに到達した時, それを Urelement と言います.まあ,集合でない要素のことです.
    3. tauchte ← tauchen vi. 潜る. 「Doch (独) は though (英)」 の巻のところで やりましたね.「duck (英) あひる」と同語源の語です.
    4. Kopf m. 頭. 「capital (英) 首都,大文字」, 「captain (英) 船長,指揮官」と同語源の語です. 英語は,頭は head を使っていますが,ヨーロッパでは cap- 系統の語を使っている国が多いです.
    5. sank p. ← sinken vi. 沈む.使役形は senken.
      「sink (英) vi. 沈む」.
    6. Weilchen n. 少しの間.← 「Weile f. しばらくの間.while (英)」+ -chen (小さいものを表す接尾語)
    7. gerudert pp. ← rudern vt. (ボートを)漕ぐ.
      Ruder n. オール.舵を取る. 「rudder (英語) かい,オール」. 「Riemen2 m. かい,オール」.ただし,Riemen には, 「Riemen1 m. ひも,皮ひも,バンド」もある.
    8. Maul n. 口(くち).
      私には語源ははっきり分かりませんが,「mouth (英) くち」と関連して覚えるのが良いでしょうね.
    9. Gras n. 草.「grass (英) n. 草」
    10. voll a. いっぱいの.「viel a. 多数の」,「pol- ラテン語の語根,多数を表す」と同語源ですね.
    11. Freude f. 喜び.「froh a. 嬉しい」の名詞形.-de は名詞を作る. froh の原義は,「元気な」みたいなので,「fr- 前へ」とイメージ的には 合ってると思います.
    12. erblickte p. ← 「erblicken vt. 見つける,発見する.みなす.」
      「blicken vi. 目を向ける」.「bl- 輝く」系統の語はユーロッパに多数. 「blanc (英) 白い.空白」,「bleench (英) 漂白する」, 「blue (英) 青(白)い」,「blind (英) (眩しくて)見えない」, 「black (英) 黒い(燃え尽きて炭になっただそうな)」,他多数.
      ドイツ語でもblicken に関係のある語が多いので,覚えておくと良い語. 「Blick m. 視線」,「Einblick m. 見ること,洞察」, 「Augenblick m. 一瞬 = Augen (目) + Blick」.「Auge n. 目」は, 母音は大分変っているのと g ↔ y で,見て取りにくいかも しれませんが,「eye (英) 目」と対応します.

    13. hob p. ← 「heben vt. 持ち上げる」.「heap (英) n. 積み重ね」.
    14. sprang p. ← 「springen vi. 跳ぶ,跳躍する」.「spring (英) vi. 跳ぶ,跳ねる」.
    15. laufen vi. 走る.「leap (英) vi. 跳ねる」.
    16. laut a. 音の大きな,うるさい.「loud (英) a. 音の大きな」.
    17. Warte ← 「warten vi. 待つ」.r が気になりますが, 英語の「wait vi 待つ」を十分連想できますので,これから連想することにしましょうか.
    18. nachschrie p. ← nach (to) + schreien. 「schreien vi. 叫ぶ. cry (英) 叫ぶ」
    19. hörte p. ← 「hören vt. 聞こえる,耳に入る」.
      「hear (英) 聞く」.
    20. eilte p. ← 「eilen vi. 急いでいく」. 語源小辞典には,印欧祖語 *ei の強調形との説明がありますが,まあ, そのまま覚える方がはやそうですね.
    21. bald adv. まもなく,すぐに.「bold (英) 大胆な」と同語源.
    22. armen ← arm a. 貧しい,哀れな.ゲルマン語では共通した語 だが,英語だけはフランス語由来の poor を使っているとのこと. あまり,覚える役には立たないけど,関連知識として.

    23. vergessen vt. 忘れる.「forget (英) vt. 忘れる」
      2019.08.02
    
    
    Am andern Tage, als sie mit dem König und allen Hofleuten sich zur Tafel gesetzt hatte und von ihrem goldenen Tellerlein aß, da kam, plitsch platsch, plitsch platsch, etwas die Marmortreppe herauf gekrochen, und als es oben angelangt war, klopfte es an der Thür und rief „Königstochter, jüngste, mach mir auf.“ Sie lief und wollte sehen wer draußen wäre, als sie aber aufmachte, [3] so saß der Frosch davor. Da warf sie die Thür hastig zu, setzte sich wieder an den Tisch, und war ihr ganz angst. Der König sah wohl daß ihr das Herz gewaltig klopfte und sprach „mein Kind, was fürchtest du dich, steht etwa ein Riese vor der Thür und will dich holen?“ „Ach nein,“ antwortete sie, „es ist kein Riese, sondern ein garstiger Frosch.“ „Was will der Frosch von dir?“ „Ach lieber Vater, als ich gestern im Wald bei dem Brunnen saß und spielte, da fiel meine goldene Kugel ins Wasser. Und weil ich so weinte, hat sie der Frosch wieder heraufgeholt, und weil er es durchaus verlangte, so versprach ich ihm er sollte mein Geselle werden, ich dachte aber nimmermehr daß er aus seinem Wasser heraus könnte. Nun ist er draußen und will zu mir herein.“ Indem klopfte es zum zweitenmal und rief.

    1. Hofleuten 「Hof m. 中庭,宮廷」 + 「Leute pl. 人々」 = 宮廷の人たち.」.
      「Hof m. 中庭,宮廷」の語源はよくわかりません.ゲルマン語特有の語だそうです.「Leute pl. 人々」は成長するという意味の語かららしいですが,記憶の核になるような語が ありませんから,「ルターの偉業に人々がおどロイテ,口々に賞賛した」くらいで覚えましょうか.(^_^).あと,ロイターというのはドイツ系のよくある姓のようです.ロイター通信社とか.
    2. Tafel f. 板,表,食卓,テーブル.「table (英) テーブル」.
    3. gesetzt pp. ← setzen vt. 置く,座らせる.「set (英) 置く」
    4. von prep. ~から,~の.語源不詳だそうですが,vor とか für の 逆方向っぽい感じがしますから,それで覚えておくと良いのではないかと思います.
    5. p. ← 「essen vt. 食べる」
    6. plitsch platsch ピチパチャ.擬音でしょうね.
    7. Marmortreppe = 「Marmor m. 大理石」+ 「Treppe f. 階段」.
      tr- は歩くこと,進むことに関係する語が多いですよね.
    8. gekrochen pp. ← kriechen vi. 這う,這って進む.
      「crawl (英) 這う」,「creep (英) 這う」.英語のは, どちらも後ろが ch と別系統なのが気になりますが,とりあえず, 同語源みたいです.原義は曲げるだそうです.

    9. oben adv. 上に.「ob prep. ~の上のほうに」,「offen a. 開いた」, 「über prep. ~の上方で」なども同語源.
    10. angelangt pp. ← 「an|langen vi. 到達する」.
      「langen vi. 届く,手をのばす,足りる」c.f. 「lang a. 長い. long (英) 長い」
    11. klopfte p. klopfen vi. ノックする.擬音らしい.
    12. draußen adv. 戸外で,外で.dr + 「außen adv. 外で」. 「außen adv. 外で」← 「aus prep. ~の中から(外へ)」.
      draußen ↔ drinnen
    13. aufmachte p. ← auf|machen vt. 開く,開封する.
    14. Thür Tür
    15. lief p. laufen vi. 走る.
    16. saß p. sitzen vi. 座っている.sit (英).
    17. davor da + vor = adv. その前で.
    18. warf p. werfen vi. 投げる.「warp (英) 曲げる」と同語源. 印欧祖語 *wer- 回す.
    19. hastig a. 急いだ.「haste (英) n. 急ぎ」.
    20. ganz a. 全部の.adv. まったく.語源不詳とのこと.
      「ガンツ(と)して」くらいでダジャレで覚えますかね.
    21. angst a. 不安な.先頭を大文字にして名詞 「Angst f. 不安」もありますね.
      「anxious (英) 心配して」と同語源です.eng- は「狭い」を表すとか.
    22. wohl a. (気分,健康が)良い. adv. おそらく.
      「well (英) 良い」.*wel- は願望とのこと.「will (英) 未来の助動詞,意思」
    23. Herz n. 心臓.「heart (英) 心臓」.
      印欧祖語 「*kerd- 心臓」.ヨーロッパでは広く共通している.
    24. gewaltig a. 激しい.巨大な.← 「Gewalt f. 暴力」. これは「walten vi. ちからなどが働いている,作用している」から. まあ,年寄りは「ゲバ ... 過激な学生の闘争」,「ゲバ棒」などから 「Gewalt f. 暴力」は連想しやすいですよね.
    25. fürchtest ← fürchten vt. 恐れる.vi. 心配する.
      「frighten (英) 怖がらせる」.
    26. Riese m. 巨人,大男.
      語源はよくわかりませんが,「rise (英) 立つ」くらいから連想させると 覚えやすいかもしれません.
    27. sondern conj. ~ではなくて.語源はよくわかりませんが, なんとなく,「ander a. もう一方の」に意味と音が似ているので, それに何かの s が付いたくらいの連想をしておくと良いかもしれません.

    28. garstiger ← 「garstig a. 汚らしい」.
      語源はわかりません.「gar adv. 全然」が「料理が出来上がって」という 意味から来ているらしく,それは「*gwher- 熱い」に由来 する動詞「料理する」の過去分詞からだそうです.もしかしたら, 熱を加えすぎて焦がしたのかもしれません.(^_^)
    29. lieber ← 「lieb a. 愛する」.「lief (英) 喜んで」「love (英) 愛」.
    30. fiel p. ← 「fallen vi. 落ちる」.「fall (英) 落ちる」
    31. weil conj. なので.「while (英) conj. ~している間に」
    32. heraufgeholt pp. herauf|holen.「holen vt. 取りに行く,連れに行く(get)」
    33. durchaus adv. 完全に.durch (through) + aus (out) = throughout.
    34. verlangte p. ← 「verlangen vt. 要求する」.
      「long for」という感じでしょうか.
    35. nimmermehr adv. 決して~しない.「nimmer adv. 決して~ない」 + 「mehr a. より多くの. adv. より以上の」.
      nimmer ← 「immer adv. いつも変わらずに,常に」は,je と mehr (の関連語)がくっついた形とか.ということは,nimmermehr の 後ろは,mehr mehr ですね.
      mehr は 「more (英) もっと沢山」を思い浮かべれば覚えやすいですね.
    36. zweitenmal 「zweit a.二番目の」.「-mal 数詞について副詞を作る接尾語」
      2019.08.05
    
    

    „Königstochter, jüngste,
    mach mir auf,
    weißt du nicht was gestern
    du zu mir gesagt
    bei dem kühlen Brunnenwasser?
    Königstochter, jüngste,
    mach mir auf.“

    1. weißt ← 「wissen vt. 知っている」.「wit (英) n. 知恵」.
      印欧祖語「*wed- 見る」から.そういえば,「witness」は目撃者ですね.
      2019.08.05

    
    
    Da sagte der König „was du versprochen hast, das mußt du auch halten; geh nur und mach ihm auf.“
    Sie gieng und öffnete die Thüre, da hüpfte der Frosch herein, ihr immer auf dem Fuße nach, bis zu ihrem Stuhl. Da saß er und rief „heb mich herauf zu dir.“ Sie zauderte bis es endlich der König befahl. Als der Frosch erst auf dem Stuhl war, wollte er auf den Tisch, und als er da saß, sprach er „nun schieb mir dein goldenes Tellerlein näher, damit wir zusammen essen.“ Das that sie zwar, aber man sah wohl daß sies nicht gerne that. Der Frosch ließ sichs gut schmecken, aber ihr blieb fast jedes Bißlein im Halse. Endlich sprach er „ich habe mich satt gegessen, und bin müde, nun trag mich in dein Kämmerlein [4] und mach dein seiden Bettlein zurecht, da wollen wir uns schlafen legen.“ Die Königstochter fieng an zu weinen und fürchtete sich vor dem kalten Frosch, den sie nicht anzurühren getraute, und der nun in ihrem schönen reinen Bettlein schlafen sollte. Der König aber ward zornig und sprach „wer dir geholfen hat, als du in der Noth warst, den sollst du hernach nicht verachten.“ Da packte sie ihn mit zwei Fingern, trug ihn hinauf und setzte ihn in eine Ecke. Als sie aber im Bett lag, kam er gekrochen und sprach „ich bin müde, ich will schlafen so gut wie du: heb mich herauf, oder ich sags deinem Vater.“ Da ward sie erst bitterböse, holte ihn herauf und warf ihn aus allen Kräften wider die Wand, „nun wirst du Ruhe haben, du garstiger Frosch.“

    1. mußt ← müssen aux. ~ねばならない.「must (英) aux. ねばならない」
    2. geh ← gehen vi. 行く.「go (英) vi. 行く」
    3. nur adv. ただ~だけ.ni + waeri (wäre) だそうで.
    4. gieng = ging p. ← 「gehen vi. 行く」.
    5. öffnete p. ← 「öffnen vt. 開ける」. 「open (英) vt. 開ける」
    6. hüpfte p. füpfen vi. ぴょんぴょん跳ねる. 残念ながらこれの語源はしりません.
    7. immer adv. いつも.「immer adv. いつも変わらずに,常に」は, 意味的には je と mehr の古い形の語がくっついた形らしいです.
    8. Fuße ← Fuß m. 足.「foot (英) 足」.印欧祖語「*ped-」 「pedal (英) ペダル」など,足は,この語源のものがヨーロッパの言語で広く普及.
    9. Stuhl m. 椅子.「stool (英) 椅子,足台」. 印欧祖語で,「*sta- 立っている.(正確には a は上に飾りがついている)」だそうです.
    10. heb「heben vt. 持ち上げる」
    11. zauderte p. ← zaudern vi. ためらう.すみません,語源は分かりません.
    12. bis prep. ~までに.conj. ~するまでに.古ド bi ze = bei + zu (~のそばに)だそうです.
    13. endlich adv. 遂に,「end (英) 終わり」
    14. befahl ← befehlen vt. 命令する. もとは「委ねる」の意味だったらしい.後ろの部分は「fehlen vi. 欠けている」と 同じ形だが,これと同語源なのかどうかは私は分からない.ちなみに, 「fehlen vi. 欠けている」は,「falsch a. 間違った.false (英)」と同語源.
    15. erst a. 最初の.adv. 最初に.「ehe conj. ~する前に」,「eher a. より早く」と同語源で,最上級.
    16. wollte p. wollen aux. 未来や意思の助動詞.「will (英) aux. 」.
    17. nun adv. now.印欧祖語で「*nu- 新しい」
    18. schieb (命令法) ← 「schieben vt. 押す」.「shove (英) vi. 押しのける」.

    19. näher (比較級) ← 「nah[e] a. 近い」.「nach prep. ~へ」と同語源.
    20. zusammen adv. 一緒に.「zu + 古ド saman」.印欧祖語「*sem- 一つ,一緒に」.「same (英) a. 同じ」も同語源.

    21. that tat p. ← 「tun vt. する」.「do (英) vt. する」. 一瞬,英語の that と見間違えますね.
    22. zwar adv. なるほど~ではあるが.「古ド zi + ware (a は上に飾りがある)」.
    23. sies sie's = sie es
      "aber man sah wohl daß sies nicht gerne that"
      = "aber man sah wohl daß sie es nicht gerne tat"
      英語に逐語置き換えすると
      "but, man saw well that she it not willingly did"
    24. gerne 「gern[e] adv. 喜んで」.もともと「熱心な」という意味の語. 同語源の語に「Gier f. 激しい欲望,渇望 」,「begehren vt. 切願する」などがある.
    25. blieb (命令法) ← 「bleiben vi. 留まる,残る」.-leib- の 部分が「くっつく」という意味を持っていて,この意味が生まれたとか. -leib- の部分は,「Leber f. 肝臓」,「leben vi. 生きる」と同語源とのこと. まあ,「くっつく」部分はほっといて,「生きる leben」のは この世に「とどまる bleiben」くらいを思い浮かべていれば,多少, 記憶のネットワークは強化できるかもしれません.
    26. fast adv. ほとんど.「fest a. 固い,固定した」に対する副詞. 「fasten (英) vt. 固定する」.
    27. jedes (男性および中性の2格)← 「jeder pron. 各々」. 語の成り立ちとしては,「je (常に) + weder (二つの中の1つ)」の 形とのこと.古い時代のドイツ語なので,それぞれの形は正確ではないが.
    28. Bißlein 「Bissen m. 一口」 + -lein = 一口の食べ物(一口の縮小語).
    29. Halse ← Hals m. 首.「collar (英) 襟」 . 印欧祖語「*kwel- 回す」
    30. satt a. 満腹の.「satisfy (英) vt. 満足させる」と同語源.
    31. gegessen pp. ← 「essen vt. 食べる」.「eat (英) vt. 食べる」
    32. müde a. 疲れた.「mühen v. (sich) 苦心する,努力する」の 過去分詞から.「Mühe f. 骨折り」も同根.
    33. Kämmerlein 「Kammer f. 小部屋」+ 「-lein (縮小語)」
    34. seiden a. 絹の.「Seide f. 絹」.8世紀ころのラテン語から らしい.「silk (英) 絹」とは別系統.
    35. Bettlein 「Bett n. ベッド」 + 「-lein (縮小語)」
    36. zurecht|machen vt. 取り繕う.「zurecht- 「しかるべき形に」を 表す前綴り」は,zu (to) + recht (right (英)) .right (英) は, 「reg- 統治する,支配する」から.
    37. legen vt. 置く.上の legenを参照.
    38. fieng = fing ← fangen を参照.
    39. kalten ← 「a. 寒い,冷たい」.「cold (英) a. 寒い,冷たい」
    40. anzurühren ← 「an|rühren vt. 手で触れる」. 「rühren vt. (手や足などを)動かす」.語源は分かりません.
    41. getraute p. getrauen v (sich) あえて~する.「trauen vi. 信用する」は,「true (英) a 真実の」と同語源.
    42. reinen ← 「rein a. 清らかな,純粋な」.原義は「ふるいにかけられた」.
    43. sollte p. ← 「sollen aux. ~しなければならない」. 「shall (英)」.
    44. ward p. ← 「werden vi. ~になる.aux. ~だろう.受け身を作る」. 印欧祖語「*wer- 回す」.
    45. zornig a. 怒って. 「Zorn m. 怒り」.「zürnen vi. 怒る」. 語源は分かりません.あれっ? 数学で 「Zorn の補題」 ってあるんだけど, この補題を証明した Max August Zorn さん (1906-1993) の Zorn は「怒り」という意味の名前でしたか. ご本人は優しそうな顔をしているのですが.

    46. Noth Not f. 困窮,必要.「need (英) 必要」.Not と need は 母音が変わっているので,なかなか 同語源と見抜けませんね.Not が英語の not と 同じ綴りなのも対比を難しくしている原因でしょう.
    47. warst ← ware p. ← sein vi. 存在する,ある.
    48. verachten vt. 軽蔑する.「achten vt. 尊敬する」の 「ver- (過ぎ去って)」で,その対の「軽蔑する」.
    49. packte p. ← 「packen vt. 詰める,しまう,くるむ」. 「pack (英)」
    50. Fingern pl. 「Finger m. 手の指」.「finger (英) n. 手の指」.
    51. Ecke f. 角(かど),隅.「edge (英) 刃,辺,角」.印欧祖語「*ak- 鋭い,尖った」
    52. bitterböse a. 激怒している.「bitter a. 苦い」 + 「böse a. 邪悪な,怒っている」. 「bitter a. 苦い」は,「bißen vt. 噛みつく」と同語源.原義は「かじるような」. 「bite (英) かじる」とも同語源.
      「böse a. 邪悪な,怒っている」は,「bad (英) a. 悪い」と同語源.「膨らんだ,腫れた」が原義.
    53. Kräften pl. ← Kraft f. 力.「craft (英)n 技巧」と同語源.
    54. wider prep. ~に逆らって,~に向かって.印欧祖語「*wi- 別々の,離れた」.案外,「bi- 2つの」とも関係あるかもしれませんね.
    55. Wand f. (室内の)壁.「wand (英) 魔法の杖」とも同根.また, 「winden vt. 巻く,編む」とも同根で,「編んだもの」という意味.ドイツの室内の 壁は編んで作ってあるのでしょうか.
    56. Ruhe f. 休息.「Rast f. 休息」とも同根.「rest (英) n. 休息」.

    2019.08.07
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    Als er aber herab fiel, war er kein Frosch, sondern ein Königssohn mit schönen und freundlichen Augen. Der war nun nach ihres Vaters Willen ihr lieber Geselle und Gemahl. Da erzählte er ihr, er wäre von einer bösen Hexe verwünscht worden, und Niemand hätte ihn aus dem Brunnen erlösen können als sie allein, und morgen wollten sie zusammen in sein Reich gehen. Dann schliefen sie ein, und am andern Morgen, als die Sonne sie aufweckte, kam ein Wagen heran gefahren mit acht weißen Pferden bespannt, die hatten weiße Straußfedern auf dem Kopf, und giengen in goldenen Ketten, und hinten stand der Diener des jungen Königs, das war der treue Heinrich. Der treue Heinrich hatte sich so betrübt, als sein Herr war in einen Frosch verwandelt worden, daß er drei eiserne Bande hatte um sein Herz legen lassen, damit es ihm nicht vor Weh und Traurigkeit zerspränge. Der Wagen aber sollte den jungen König in sein Reich abholen; der treue Heinrich hob beide hinein, stellte sich wieder hinten auf und war voller Freude über die Erlösung. Und als sie ein Stück Wegs gefahren waren, hörte der Königssohn daß es hinter ihm krachte, als wäre etwas zerbrochen. Da drehte er sich um und rief [5]

    1. Königssohn Königs + 「Sohn m. 息子」 = 王子.「son (英) n. 息子」
    2. freundlichen ← freundlich a. 友好的な,親しい,親切な. 「Freund m. 友人」は「愛する」の現在分詞とのこと.「friend (英) n. 友人」
    3. Augen Auge を参照.
    4. Willen ← Wille m. 意思.「will (英) n. 意思」
    5. Gemahl m. ご主人.会話では,Herr を冠する.ここでは「夫」.
      でも,なんで「夫」なんでしょうね. 「mahlen vt. (穀物などを)ひく,すりつぶす」だから, はっ!,もしかして「穀潰し(ごくつぶし)」?
      いや,でも,Ge- が ついているんで,奥さんに使い潰される人という意味かも. 結婚は奥が深いですね.
    6. erzählte p. ← erzählen vt. 語って聞かせる,物語る.
      er- は非分離前綴り.「中から外へ」の意味がある(aus と似た意味).
      「zählen vt. 数える」.「tell (英) vt. 告げる」は,「数を言う」→ 「告げる」.「Zahl f. 数」.数学で整数の集合は Z ですね.

    7. bösen bitterbösen を参照.
    8. Hexe f. 魔女.「hag (英) n. 鬼婆」.ある複合語の前半だけが残って Hexe や hag になったみたいですが,その前半部分は,「木で囲まれた」みたいな 意味で,「hedge (英) 生垣」とも同語源です.なんか,うっそうとした木々に囲まれた ところに住んでいる人なんでしょうか.
    9. verwünscht ← verwünschen vt. 呪う. 「wünschen vt. 望む,願う」.「」Wunsch m. 望み」. 「verachten vt. 軽蔑する」↔「achten vt. 尊敬する」など, ver- がつくと反対の意味になるのが多いですね.
    10. worden pp. ← 「werden vi. ~になる.aux. ~だろう.受け身を作る」
    11. niemand pron. 誰も~ない.ni + je + man からだそうで. 「noman (英) 誰も~ない」と同じような作りですね.
    12. erlösen vt. 解放する,救済する,救う.「er (aus)」 + 「lösen vt. 剥がす」.「lose a. 緩い」.「loose (英) a. 緩い」を思い浮かべればよいですね.er- は「結果・終着」を表す前綴りなのですが,aus と同語源で, out (中から外へ)くらいに とらえておけばよいと思います.

    13. morgen adv. 明日.「Morgen m. 朝」の第3格.「morning (英) n. 朝」
    14. Reich n. 帝国,領域.「reich a. 裕福な」も同語源. 語根「reg- 支配する」から.これと同語源のものは, 英語にも,region, rich, regulation, right など多数.
    15. dann adv. それから.「then (英) adv, それから」と同語源.
    16. ein|schliefen p. ← ein|schlafen vi. 眠り込む.
    17. auf|weckte p. auf|wecken vt. 目を覚まさせる. 「wecken vt. (眠っている人を)起こす」は,「wachen vi. 目覚めている」の 使役形.「wake (英) 起こす」も同語源.
    18. Wagen m. 車.「Weg m. 道」,「wagon (英) n. 荷馬車」も同語源.
    19. weißen ← weiß a. 白い.「white (英) a. 白い」.
    20. Pferden ← Pferd n. 馬.ラテン語からだが,ちょっと 記憶の助けになりそうな話題を思いつかない.
    21. bespannt ← bespannen vt. 覆う,ひっぱる,馬などをつなぐ. 「spannen vt. 張る」.「span (英) vt. 張る,広がる」.
    22. Straußfedern 「Strauß m. ダチョウ」+ 「Feder f. 羽,羽毛 「fether (英) 羽」」. Strauß は,「ostrich (英) n. ダチョウ」と同語源らしい.
    23. giengen gingen p. ← gehen vi. 行く.
    24. Ketten pl. ← Kette f. 鎖,チェイン.ラテン語より.「chain (英) n. チェイン」も同語源らしいが後ろの部分がかなり違っている.
    25. hinten adv. 後方に.「hind (英) a. 後ろの,後部の」.「behind (英) prep. 後ろに」のbe-の後ろの 部分も同語源.これの前置詞は「hinter prep. ~の後ろに」.
    26. stand p. ← stehen vi. 立っている.「stand (英) vi. 立つ」
    27. Diener m. 召使,しもべ.「dienen vi. 奉仕する」.すみません.由来は分かりません.
    28. treue treu a. 忠実な.原義は「しっかりした,信頼のおける」. 「true (英) n. 真実」も同語源.
    29. betrübt pp. ← betrüben vt. 悲しませる.
      「trüben vt. 濁らせる.曇らせる」.betrüben は, 「目を涙でかすませる」といった感じの語なんでしょうね.語源小辞典には この原義は「沈殿物をかき混ぜる」とありますが,音が似た語に, 「Tropfen m. 滴」,「triefen vi. したたる」などがあります.こちらは 「drop (英) vi. したたる」と同語源のようです.「水」とか「涙」, 「しずく」などに関連して,すこしイメージの似た語 なのでまとめて覚えると良いかもしれません.
    30. verwandelt pp. verwandeln vt. 変える,変化させる. 「wandeln vt. 変える」なので,ver-は単に強調の意味ですね. 「Wandel m. 変化」です.私はこれの語源は分かりません.
    31. Bande pl. Band n. ひも,帯.「band (英) n. バンド,帯」.「binden vt. 結ぶ」.
    32. lassen aux. させる.vt. 放置する.「let (英) vt. させる」
    33. Weh n. 悲しみ,苦しみ.weinen を参照.
    34. Traurigkeit f. 悲しみ.「traurig a. 悲しい」 + 「-keit 名詞を作る語尾」.traurig は「dreary (英) a. わびしい,もの寂しい,退屈な」と同語源.dready は 英語のオンライン語源辞典を引くと,もともと「cruel, bloody, blood-stained」と 書いてあります.「血の滴り」だったみたいで,drip とも関係するとのこと.怖いですね.
    35. zerspränge ← zerspringen vi. 割れて粉々になる, 裂ける,ぷつんと切れる.「zer- 分離,破壊」 + 「springen vi. 跳ぶ,跳躍する」.「spring (英) vi. 跳ぶ,跳ねる」

    36. ab|holen vt. とってくる,連れてくる.holen を 参照.
    37. beide a. 両方の.pron. 両方.「both (英) a. 両方の. pron. 両方」.
      記憶のためには「bi- 二つ」を思い浮かべても良いかもしれません.
    38. stellte p. stellen vt. 立てる.印欧祖語「*stel- 立てる」.
    39. Erlösung f. 救出,救済.erlösenを参照.
    40. Stück n. 断片,一部分.「stock (英) n. 在庫品、」
    41. ein Stück Wegs ある道のり
    42. gefahren pp. fahren vi. (乗って)行く.「『フェリー(Fähre f)』は進む」の巻を参照.
    43. hörte p. hören vt. 聞こえる.「hear (英) vt. 聞く」
    44. krachte p. &learr; krachen vi. すさまじい音を立てて割れる,崩れる. 「crack (英) n. 裂け目、割れ目,ひび」
    45. zerbrochen pp. ← zerbrechen vt. 粉々にする.「zer- 破壊」 + 「brechen vt. 壊す」.「break (英) vt. 壊す」
    46. um|drehte p. ← um|drehen vt. 回転させる.「um- 周りに」 + 「drehen vt. 回す」.印欧祖語「*ter- 刺し通す,こする(火を起こすために)」だそうです.「turn (英) vt. 回す」.

    2019.08.09
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    „Heinrich, der Wagen bricht.“
    „Nein, Herr, der Wagen nicht,
    es ist ein Band von meinem Herzen,
    das da lag in großen Schmerzen,
    als ihr in dem Brunnen saßt,
    als ihr eine Fretsche (Frosch) wast (wart).“

    1. großen ← groß a. 大きい. 語源小辞典には明確に書いてありませんでしたが, 「gross (英) a. 全体の,大きい」,「grow (英) vi. 成長する」とも関係があるかも しれませんね.イメージ的には一致するんで方便として, 一緒に覚えておくとよいかもしれません.
    2. Schmerzen pl. ← Schmerz m. 痛み.「smart (英) a. 気の利いた」 と同語源.smart の原義は,「苦しい,厳しい,鋭い痛みを生じる」といったものだったようです.印欧祖語「*mer- 傷つける」が想定されています.
    3. Fretsche n. Frosch の方言.
    2019.08.09
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    Noch einmal und noch einmal krachte es auf dem Weg, und der Königssohn meinte immer der Wagen bräche, und es waren doch nur die Bande, die vom Herzen des treuen Heinrich absprangen, weil sein Herr erlöst und glücklich war.

    1. noch adv. まだ.「nun + -h いまも」.
    2. meinte p. ← meinen vt. ~という意見である.「mean (英) vt. 意味する」
    3. bräche 接続法 II ← brechen vt. 折る.「break (英) vt. 壊す」
    4. ab|sprangen ← ab|springen vi. はずみをつけて飛び降りる,(ふたなどが)ぽんととれる.「ab- (off)」 + 「springen vi. 跳ねる」.
    5. Herr m. 主人.「hoar (英) a. 白髪の,年とった」と同語源で 「神々しい,白髪の」とのこと.
    6. erlöst pp. ← erlösenを参照.
    7. glücklich a. 幸運な,幸福な.「lucky (英) a. 幸運な」. 「glucklich ↔ lucky (英)」や「gleich ↔ like (英)」などのように 英語で先頭の g が落ちることはよくあります.

    2019.08.09
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    このページは長くなり過ぎましたので,次の読み物は別のページ

    使えるものを総動員してドイツ語単語を覚える (2)

    内容は「ブレーメンの町の音楽師」

    に作成しました.
    2020.7.18


    
    

あとがき

参考文献のところにも書きましたが,私は,一時期,毎日

ドイツ語語源小辞典 (同学社小辞典シリーズ) 下宮 忠雄 (著) 1992年
を眺めて暮らしていたことがありました.まだ,会社にいましたので出張に行くにも,電車の 中でこの本を眺めて,「この単語はどんな変遷をたどって今の形と意味にたどり着いたのだろう?」 と思いを巡らすのです.

また,これはドイツ語ではなく英語ですが,GENE95 という英和の辞書がテキストで手に入ると,grep を使って,あるパターンの語を効率的に抜き出すことが できるようになりました.これは単語のもとの形を想像するのに役にたちました. ドイツ語でなくても,英語はゲルマン系の言葉を含んでいますし,また,ラテン語系の 言葉も,さらに昔にさかのぼればプロト・インド・ユーロピアン言語として 同根の言葉にたどり着くかもしれません.

こうして想像を巡らせた単語の系統は多く誤謬を含んでいるでしょう.言語学としては 多くの証拠を見つけなければ合理的な主張としてまとめることはできません. 私は言語学者になりたいわけではないし,なれるわけでもない(ほかに数学や計算機科学の 誘惑が多すぎる)ので,これをなんとか利用するには,学問としてではなく, 単語を覚える手段として活用するのが良いかなと思い,ここのページにあるような まとめ方をしているわけです.

ということで,ここのコンセプトは「語源や音声学の知識から語呂合わせまで なんでも活用して,ドイツ語単語を効率的に覚える」です.

ちなみに,実は,私は一時期,毎日,フランス語の辞書を眺めて過ごしたこともあるのです. まあ,ドイツ語でなにかうまい書き物ができたら,次はフランス語の書き物でもやってみようかなと思っています.

こういう野心は持っているのですが,実は,私はドイツ語もフランス語も文法は ほとんどわかっていません.ドイツ語は大学で履修したのですが,忘れました. フランス語は趣味で学習書を読んだのですが,これも忘れました.単語だけの 知識でどこまでできるやら.ちなみに,両方ともある程度は言語史の本は読みましたので どのように音や変化してきたかなどの話はおぼろげながら頭の隅に残っています.

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参考文献・参考サイト

  1. ドイツ語語源小辞典 (同学社小辞典シリーズ) 下宮 忠雄 (著) 1992年
    私は,来る日も来る日もこの本を眺めていたことがありました.英語の語源については沢山の本が出ているのですが ドイツ語の語源の本はあまりありません.(これを書いている時点で)手ごろなドイツ語の語源の本としては, この本がほぼ唯一ではないかと思います.でも,この本は薄いのでやはり記述量が少ないです.ほかの参考文献とあわせて使うのが良いでしょう.

  2. クラウン独和辞典 SANSEIDO (私が持っているのは 1991年3月15日版)
    上に書いたドイツ語語源小辞典は薄い本なので,それぞれの語源は書いてありますが, どのようなイメージの語なのかわかりにくいところがあります.例えば,ent- という 前つづりは,分離を表す前つづりということは分かるのですが,「分離」と関連して それが抱えているいろいろな意味までは分かりません.本文の中で述べた英語のpre-, pro- のように,同じ前でも,pre-は時間的に前のことが多く,pro-は後のことが あり,「前」だけではなかなか分からないのと同じです.そんなとき,しっかり,前つづりの意味が 書いてある辞書はありがたいです.例えば,このクラウン独和辞典では (1) 逸脱,出現, (2) 元の状態への復帰,(3) 奪取,除去,(4) 開始の意味が例の語を伴って載っています. これは中核的な意味からの派生を想像するのに役に立ちます.このような使い方で, 役に立つという参考文献なので,特にクラウン独和辞典に与するつもりはありません. たまたま,私が持っている独和辞典でこのような意味がしっかり書いてあったのが, この辞書だったということです.ほかに,ものによっては語源まで記載された辞書も あると思います.

  3. Online Etymology Dictionary
    英語の語源辞典ですが,語源がプロト・インド・ヨーロッパ言語(PIE)まで さかのぼってくれることが多く,その過程で多くのゲルマン語系の言語との 関連が書かれています.ということでドイツ語の語源を推察するのにも ずいぶん役に立ちます.つまり,関連のありそうな英語の単語を入れてみれば 良いのです.十数年前に一度,タイポを見つけたので連絡したら, 「一人でやっているので,こういう指摘は助かります」と言われて,「いや, こちらこそずいぶん利用させていただいています」と勝手に恐縮してしまったことが ありました.なんという出来た人なのでしょう.2019.05.25

  4. 図説 ドイツ語の歴史, ヨアヒム・シルト著, 橘 好碩 訳
    ドイツ語の歴史の話です.音声にどのような変化があったかなどを頭に入れておくと 英語など近隣の言語との関係が分かって良いです.たぶん,ドイツ語史の本は いろいろあるのでしょうが,私の住んでいるところの近くの図書館にあった本が これでした.「ドイツ語 歴史」とか「ドイツ語史」というキーワードで検索すると いくつか出てくると思うので,書評など見ながら物色してみてください.

  5. 図説 ドイツ語学への誘い - ドイツ語の時間的・空間的拡がり --, 河崎靖
    これもドイツ語の歴史や周りの言語との関係を知るために役に立ちます. やはり,どういう経緯で一つの言語が形成されていったかや,ある時期に起こった 系統的な音変化,文法変化などを捉えておくのは役にたちます.

  6. 匙はウサギの耳なりき―ドイツ語源学への招待, 石川 光庸, 1993/9/1
    ドイツ語の語源に関する数少ない読み物の中の一つです.上の 「図説 ドイツ語の歴史」を借りた私の家の近くの図書館にあったので 一度借りたのですが,あまり読んでいません.英語の語源の本はたくさんあるのですが ドイツ語のはあまりなく,貴重ですのであげておきます.

  7. 効率よく覚えるドイツ重要単語2200 新書 – 石川 光庸, サスキア 石川‐フランケ, 2009/12/1
    上の「匙はウサギの耳なりき―ドイツ語源学への招待」の著者ともう一人の方の共著です. 語源も活用して覚えるということで近くの図書館で借りてざっと見てみました. 基本的に重要な単語が掲載されている単語集で,英語で同語源のものがあるものには [英] と印があって,英語の単語が書いてあります(例えば, heiß [英] hot のように).語源の本ではなく単語集なので,自分で 意識してその情報を使うようにしないと読み流してしまうかもしれません. 繰り返しになりますが,基本的には単語集なので,重要な単語を覚えるのに, ときどき語源的なつながりの情報もあるという感じでしょうかね.

  8. 英語から覚えるドイツ語単語, 福田 幸夫 著, 1994/5/1
    大昔に本屋で手に取ってみただけなのであまり覚えていませんが, やはり,ドイツ語を英語と関連させて覚える本は少ないのであげておきます. 確か,英語との似かた(まったく同じとか,ある種の綴りを別に変えたパターンとか) で著者なりの整理をしていたと思います.そういう整理は語源の勉強だけでなく,それを ドイツ語単語学習の効率化に適合させる意味で重要と思います.このような本が 少ないので,それぞれの著者の整理の仕方は読む人によって 受け入れやすい/受け入れにくいが出てくるとは思いますが.

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