使えるものを総動員してドイツ語単語を覚える

by Akihiko Koga
9th June 2019 (Update)
25th May 2019 (First)
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内容

  1. このページの内容は
  2. 本論
    1. 「Schließen」の巻
    2. 「『フェリー(Fähre f)』は進む」の巻
    3. 「Doch (独) は though (英)」 の巻
    4. 「wichtig は重さ (weight) があり,とても重要」の巻
    5. 「aus は out 」 の巻
    6. 「よく使われる動詞(1)」の巻
  3. あとがき
  4. 参考文献,参考サイト

このページの内容は

これは語源や言語学の知識から連想,語呂合わせまで,何でも,利用できるものは駆使してドイツ語単語を覚える工夫をしようという企画です.一つ上のページにも 書いたように,これは以前,個人的なメーリングリストに投降したものを書き直したもので, 全6回しかありません.したがって,包括的にドイツ語の単語を覚えるためには,かなり 内容が不足しています.私は,将来的にこの趣旨でまとまった内容が書けないかなと考えていて, そのためのパイロット版です.

まず,断っておかないといけないのは,ここに書いてある内容は,言語学的に何かを主張しようと いう気は一切ないことです.単に,ドイツ語単語を記憶するための手がかりとしてここの内容を 提供するという趣旨です.ですから,言語学を専攻している方々は,ここに荒唐無稽なことが 書いてあるからと言って苦情のメールを送ってこないようにしてください.また, ここの情報を利用する人は,ここに書いてあることは単に記憶を助ける手がかりであるということを 十分認識してください.

本論

  1. 「Schließen」の巻
  2. 「『フェリー(Fähre f)』は進む」の巻
  3. 「Doch (独) は though (英)」 の巻
  4. 「wichtig は重さ (weight) があり,とても重要」の巻
  5. 「aus は out 」 の巻
  6. 「よく使われる動詞(1)」の巻

  1. 「Schließen」の巻

    ドイツ語の schließen はどんな意味でしょう?

    これは「閉じる」,つまり,英語の close です.これら二つの単語はちょっと見たところ,あまり似ていません. ずいぶん,印象が違います.でも,次のように,close の前に s を補ってやると, 子音は符号します.西洋では,語の頭の s が消えているか, あるいは,追加されているといった感じのする,2国間の単語がしばしば見つかることが あります.また,西洋の言葉では子音が大切です.母音はいろいろな理由で変化したり, あるいは弱くなって消えてしまっている場合があります.フランス語なんて凄まじいですね. 単語に母音がなくなって読まない子音がたくさんくっついていて,それが後ろに母音で 始まる単語がが付くと突然発音されるようになってくる.面倒ですけど,元の語を辿るには 貴重な手がかりです.

    二つの単語の音は大まかに上のように対応しています.ドイツ語の sch が いつもいつも sc に対応する訳ではありません.でも,schreiben と scribe はこの対応の例ですね.

    いったん,頭の中で schließen と close が結びつくと,次の単語は 比較的容易に覚えられるでしょう.右側を紙などで隠しながら英語や日本語の 意味を言ってみてください.語学において,単語は時間をかけて意味を引き出すのでは だめで,瞬発力が必要になります.だから,何度も練習して,すぐ意味が引き出せるように するのと,あと,この例の対応を頭にしっかり作ると似た対応がでてきたとき応用が利きます.

    ドイツ語単語意味
    schließenvt 閉じる
    Schließlichadv 最後に.-lich は英語だと like です.「Algol-like な言語」などは計算機屋さんにはおなじみの用語ですね. ドイツ語の ch は k とかなり関係の深い音です.
    Schlußm 終わり(close です)
    Schlüsselm 鍵 (-el は道具の接尾語)
    Schlossn 錠,城

    単語だけの紹介だとなんなので,例文を一つだけ載せておきます.

    それではまた次回.

    
    
    2016.07.17 に書いたものを書き直した.2019.05.25 (土)
    
    
  2. 「『フェリー(Fähre f)』は進む」の巻

    fahren vi (乗り物に乗って)行く

    • 今回は「前に進む」感じの単語を勉強します
    • 音声学の基礎知識も少しだけ仕込みます

    注意) しつこいですが,ここの内容は言語学的な主張ではまったくありません. あくまで記憶のための連想を強化する便宜的な目的です.この位言っておけば,無用なクレームを 受けないですむのではないかと....

    
    
    2016.07.16 に書いたものを多少加筆して書き直しました.2019.05.26 (日)
    
    
  3. 「Doch (独) は though (英)」 の巻

    D の仲間の音(d, t, th(ð), th(θ))の関係を使った覚え方

    前回は唇で作る音,b, p, v, f の関係を使ったドイツ語単語の連想方法をお話ししました. 今回は少し口の奥に引っ込んで,歯茎の裏あたりで作る音に着目します.つまり,d を基準と する音,d, t, th(ð), th(θ) です.ドイツ語では th は t の発音なのですが, 英語と一緒に考えると結構連想が利きます.

    d, t, th(ð), th(θ) にも b, p, v, f と同様のひし形の関係があります. つまり,d の発音のとき,声帯の震えを無くして無声音化すると t になり,d で破裂を 不完全にして,空気を漏らすと英語のth(ð),そして,t の破裂を不完全にしたものと th(ð)の無声音化が英語のth(θ)です.ドイツ語では th はどちらも t の発音ですね.

    ということで,d, t, th(ð), th(θ) を仲間と考えるとドイツ語,英語で似た単語が たくさん見つかります.

    また,ドイツ語と英語で概ね次のような対応があります.

    ドイツ語英語
    dth
    td

    あと,z (ドイツ語)- t(英語)という関係もありますが,これはまた今度.

    では,d(ドイツ語)-th(英語)で気づきにくいものをあげていきましょう.

    ドイツ語単語意味
    dochadv. しかし though(英)
    ch(ドイツ語)-gh(英語) は次くらいのお話かな)
    durchprep. ~を通って through(英)
    母音は変化しにくいという印象があるかもしれませんが, 結構変化しますし,弱くなると無くなることがあります.
    dicka. 厚い thick(英)
    dichta. 密な -t は過去分詞的な意味を加えます.
    thick されたというような感じでしょうか.また,-t はそれがつけられた 単語を名詞化する場合もあります.どちらにしても,その前の単語は t に つられて無声化したり,破裂が不完全になることがあります.
    dünnthin(英)
    dick(厚い) とdünn(薄い) は語尾の関係が max(大きい) <->min(小さい) のような音の関係になっていますね.
    deckenvt. 覆う.
    dick (英語 thick (厚い)) から連想して!
    ついでに前綴り ent- 離す を付けた entdecken vt 発見する(discover = dis(away)-cover) も覚えておきましょう.この ent- (離す) はどこかでやる と思います.とりあえず,英語の anti- (アンチ)と同根と 思っておいてください.
    Deckef. 覆い.
    Dachn. 屋根
    覆われたものかな.英国の首相に Thatcher という方がいましたが, これは「屋根をふく人」という意味ですね.

    うーん,dick から下,全部同じ系統の語で固めてしまいましたね.まずは1つの系統の 語でしっかりイメージを固めてしまって,あと,周りに広げていくのは良い学習方法と 思います.d (独) - th (英) の対応は結構あるので,自分でも探してみるとよいと思います.

    次は,t(ドイツ語)-d(英語)です.一度,表をみたら,次は 右側を隠して,先頭に t を d に変えたり,すでに勉強した音の近さを利用して 英語の似た単語を思い浮かべながら意味を言ってみてください.言い忘れましたが, 上の表も同じように先頭の d を th に変えて記憶を確かめるのに使ってください.

    ドイツ語単語意味
    Taln. dale(英) 谷
    dale があまり馴染みのない単語だったりするので,これは独英両方 一度に覚えるのが良いのでしょう.
    tauba. 耳の聞こえない deaf(英)
    b と f が仲間であることも思い出しながら覚えます
    tauchenvi. 潜る duck(英)
    でもアヒル(duck)はドイツ語で Ente f. なんですよね. これはラテン語の anas (duck) と 同根らしいです.
    Teilm. 部分 deal(英), deal of たくさん
    tiefa 深い deep(英)
    Tiern. 動物. dear(英語)しか
    ちょっと独英で指している動物の範囲が違いますね
    Tishm. 机 desk(英)
    dish, disc (sch (ドイツ語)-sc(英語)の例)
    Todm. 死 deth(英)
    tota. 死んだ death(英)
    Torn. 門 door(英).
    through と作りと意味が似てますね.もっとも, 最後の-gh に対応する部分は Tor にも door にも ありませんので,似ているのは最初の2つの子音だけですけど.
    Türf. 戸 door(英)
    through もこの類の語のような気がしますね(^_^)

    2016年7月17日の資料をもとに多少加筆 2019.06.05 (水)
    
    
  4. 「wichtig は重さ (weight) があり,とても重要」の巻

    次は下の絵から内容を起こす予定です.

    
    
  5. 「aus は out 」 の巻

    以下,順次,元の絵から内容を起こす.

    
    
  6. 「よく使われる動詞(1)」の巻

    以下,順次,元の絵から内容を起こす.

    
    

あとがき

参考文献のところにも書きましたが,私は,一時期,毎日

ドイツ語語源小辞典 (同学社小辞典シリーズ) 下宮 忠雄 (著) 1992年
を眺めて暮らしていたことがありました.まだ,会社にいましたので出張に行くにも,電車の 中でこの本を眺めて,「この単語はどんな変遷をたどって今の形と意味にたどり着いたのだろう?」 と思いを巡らすのです.

また,これはドイツ語ではなく英語ですが,GENE95 という英和の辞書がテキストで手に入ると,grep を使って,あるパターンの語を効率的に抜き出すことが できるようになりました.これは単語のもとの形を想像するのに役にたちました. ドイツ語でなくても,英語はゲルマン系の言葉を含んでいますし,また,ラテン語系の 言葉も,さらに昔にさかのぼればプロト・インド・ユーロピアン言語として 同根の言葉にたどり着くかもしれません.

こうして想像を巡らせた単語の系統は多く誤謬を含んでいるでしょう.言語学としては 多くの証拠を見つけなければ合理的な主張としてまとめることはできません. 私は言語学者になりたいわけではないし,なれるわけでもない(ほかに数学や計算機科学の 誘惑が多すぎる)ので,これをなんとか利用するには,学問としてではなく, 単語を覚える手段として活用するのが良いかなと思い,ここのページにあるような まとめ方をしているわけです.

ということで,ここのコンセプトは「語源や音声学の知識から語呂合わせまで なんでも活用して,ドイツ語単語を効率的に覚える」です.

ちなみに,実は,私は一時期,毎日,フランス語の辞書を眺めて過ごしたこともあるのです. まあ,ドイツ語でなにかうまい書き物ができたら,次はフランス語の書き物でもやってみようかなと思っています.

こういう野心は持っているのですが,実は,私はドイツ語もフランス語も文法は ほとんどわかっていません.ドイツ語は大学で履修したのですが,忘れました. フランス語は趣味で学習書を読んだのですが,これも忘れました.単語だけの 知識でどこまでできるやら.ちなみに,両方ともある程度は言語史の本は読みましたので どのように音や変化してきたかなどの話はおぼろげながら頭の隅に残っています.


参考文献・参考サイト

  1. ドイツ語語源小辞典 (同学社小辞典シリーズ) 下宮 忠雄 (著) 1992年
    私は,来る日も来る日もこの本を眺めていたことがありました.英語の語源については沢山の本が出ているのですが ドイツ語の語源の本はあまりありません.(これを書いている時点で)手ごろなドイツ語の語源の本としては, この本がほぼ唯一ではないかと思います.でも,この本は薄いのでやはり記述量が少ないです.ほかの参考文献とあわせて使うのが良いでしょう.

  2. クラウン独和辞典 SANSEIDO (私が持っているのは 1991年3月15日版)
    上に書いたドイツ語語源小辞典は薄い本なので,それぞれの語源は書いてありますが, どのようなイメージの語なのかわかりにくいところがあります.例えば,ent- という 前つづりは,分離を表す前つづりということは分かるのですが,「分離」と関連して それが抱えているいろいろな意味までは分かりません.本文の中で述べた英語のpre-, pro- のように,同じ前でも,pre-は時間的に前のことが多く,pro-は後のことが あり,「前」だけではなかなか分からないのと同じです.そんなとき,しっかり,前つづりの意味が 書いてある辞書はありがたいです.例えば,このクラウン独和辞典では (1) 逸脱,出現, (2) 元の状態への復帰,(3) 奪取,除去,(4) 開始の意味が例の語を伴って載っています. これは中核的な意味からの派生を想像するのに役に立ちます.このような使い方で, 役に立つという参考文献なので,特にクラウン独和辞典に与するつもりはありません. たまたま,私が持っている独和辞典でこのような意味がしっかり書いてあったのが, この辞書だったということです.ほかに,ものによっては語源まで記載された辞書も あると思います.

  3. Online Etymology Dictionary
    英語の語源辞典ですが,語源がプロト・インド・ヨーロッパ言語(PIE)まで さかのぼってくれることが多く,その過程で多くのゲルマン語系の言語との 関連が書かれています.ということでドイツ語の語源を推察するのにも ずいぶん役に立ちます.つまり,関連のありそうな英語の単語を入れてみれば 良いのです.十数年前に一度,タイポを見つけたので連絡したら, 「一人でやっているので,こういう指摘は助かります」と言われて,「いや, こちらこそずいぶん利用させていただいています」と勝手に恐縮してしまったことが ありました.なんという出来た人なのでしょう.2019.05.25

  4. 図説 ドイツ語の歴史, ヨアヒム・シルト著, 橘 好碩 訳
    ドイツ語の歴史の話です.音声にどのような変化があったかなどを頭に入れておくと 英語など近隣の言語との関係が分かって良いです.たぶん,ドイツ語史の本は いろいろあるのでしょうが,私の住んでいるところの近くの図書館にあった本が これでした.「ドイツ語 歴史」とか「ドイツ語史」というキーワードで検索すると いくつか出てくると思うので,書評など見ながら物色してみてください.

  5. 匙はウサギの耳なりき―ドイツ語源学への招待, 石川 光庸, 1993/9/1
    ドイツ語の語源に関する数少ない読み物の中の一つです.上の 「図説 ドイツ語の歴史」を借りた私の家の近くの図書館にあったので 一度借りたのですが,あまり読んでいません.英語の語源の本はたくさんあるのですが ドイツ語のはあまりなく,貴重ですのであげておきます.

  6. 効率よく覚えるドイツ重要単語2200 新書 – 石川 光庸, サスキア 石川‐フランケ, 2009/12/1
    上の「匙はウサギの耳なりき―ドイツ語源学への招待」の著者ともう一人の方の共著です. 語源も活用して覚えるということで近くの図書館で借りてざっと見てみました. 基本的に重要な単語が掲載されている単語集で,英語で同語源のものがあるものには [英] と印があって,英語の単語が書いてあります(例えば, heiß [英] hot のように).語源の本ではなく単語集なので,自分で 意識してその情報を使うようにしないと読み流してしまうかもしれません. 繰り返しになりますが,基本的には単語集なので,重要な単語を覚えるのに, ときどき語源的なつながりの情報もあるという感じでしょうかね.

  7. 英語から覚えるドイツ語単語, 福田 幸夫 著, 1994/5/1
    大昔に本屋で手に取ってみただけなのであまり覚えていませんが, やはり,ドイツ語を英語と関連させて覚える本は少ないのであげておきます. 確か,英語との似かた(まったく同じとか,ある種の綴りを別に変えたパターンとか) で著者なりの整理をしていたと思います.そういう整理は語源の勉強だけでなく,それを ドイツ語単語学習の効率化に適合させる意味で重要と思います.このような本が 少ないので,それぞれの著者の整理の仕方は読む人によって 受け入れやすい/受け入れにくいが出てくるとは思いますが.


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