メモのような日記のような(4) 2021.03.14-

Akihiko Koga

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目次 (上が最近のものです)
  1. ガロア接続 -- 友達(準同型)以上,恋人(同型)未満? -- 2021 年 3月 14 日 (日)

ガロア接続 -- 友達(準同型)以上,恋人(同型)未満? --

2021 年 3月 14 日 (日)

以前,ここで

同型とは単に要素の名前を付け替えたに過ぎない (2018 年 1 月 28 日 (日))

というタイトルのお話を書いたことがあります.それを書いた時の動機は,本当は,
「同型の二つの領域 P, Q があって,
P は全然分かってないけどQ は良く分かっているので,
Q の知識を使って P を解析する」

というような都合の良い状況がどれだけ起こるんだろう?
ただ単に,一方は他方の中の要素の名前を替えただけなのに!

そのとき役に立つのが
準同型と同型の中間的な概念のガロア接続なのだ!

ちゃん,ちゃん!

という趣旨だったのですが,書いているうちに,同型が結構役立つ例が 次々と出てきてしまい, 最後の主張

・・・ ガロア接続なのだ!

ちゃん,ちゃん!

というところまで行けなくなってしまったのでした.また,そのときは,ガロア接続についても, あまり詳しい解説を書いていたわけではなく,説明するのに結構長くなりそうな 気がしたので,「まあ良いか.今度にしよう.」ということにしてました.あと,そこでは, 同型の話だけでなく,後半は「数学において『名前』って何だろう?」という 話に流れていったような気がします.これはこれで深遠な問題で,分量も増えてしまいました.

それから随分たって,最近, 順序集合や束論の基礎のページ を大幅に書き加えたり,再構成した中で,「ガロア接続」もかなり沢山書きました. それで,今回のお話は,単に,その宣伝というだけです.ご興味のある方は, 次の図から該当ページに飛ぶようになっていますので,参照してみて下さい.

趣味のトピックス

ガロア接続 (Galois Connection)

追記:「計算機(主にソフトウェア)の話題」に ガロア接続に基づく形式的概念分析の実験プログラム も作成しました.2021.03.30

ガロア接続は,

「二つの順序集合間の,友達(準同型)以上,恋人(同型)未満の関係」
だそうです(「友達」と「恋人」は私が付け加えました).本当は同型も含むので,「恋人(同型)未満」という言い方は変で, 「恋人(同型)以下」なんでしょうけど,「以下」だとかなり劣っているような 感じがします.それを言い出すと,同型も準同型の一種だし,ガロア接続も準同型の一種だし, なんで準同型が友達で,同型が恋人なのか分からないし, 最初っから,まったくもって正しくはない表現なのでした. むしろ,同型は自分自身なので,それを恋人というと,自分自身を愛している人と 言うことになってしまいます.配偶者のことを better half という言い方もあるので それで良いのかもしれませんが. 言葉って難しいですね.

それで,ガロア接続が何か,役に立つのかなどはあちらのページに任せて, ここの残りは,ガロア接続でなく,同型の名残のお話で,なんで名前を付け替えただけの同型が案外役に立つのか, 忘れないうちにメモ書きだけしておきます.

私は系統的な考察は無理ですが,思いつくままに上げると次のようなことがあると思います.

  1. 案外,ビューの変化で同型に気付かないことが多いこと
    案外,人間は名前の付け替えや,ビューの変更(縦と横をひっくり返す等)が苦手で, そうやって同型を発見してびっくりする

  2. 同型を作り出す表現定理の活用
    数学では,同型を作り出す色々な表現定理があるので,とりあえず同型は作り出せる

  3. 同型で埋め込まれた環境の活用
    同型は対応する二つの集合だけでなく,もう一方の置かれた環境が参考になることがある

これらについてそれぞれ,ちょっとだけ説明して,今回のお話を終わります.

まず,「人間が同型に気が付かない」ということですが, 実際のところ,本当に結構気付きません.私なんざ,ちょっとした図形でも回転したり,反転したり すると,もとの図形と同じかどうか分からなくなります.私は,知らないところを歩いていて, 良く道に迷うので,あまり空間認識力が無いとは思うのですが,ちょっと見方を変えると 同型に気付かなくなるというのは,たぶん,私だけではないと思います.幾何学の証明は 合同な三角形をみつけて,それを使って証明することが多いのですが, 「よく,こんなところに 合同の三角形を見つけたな」というような気持ちになることは皆さん学校で経験していると 思います.2つの合同な図形は,回転,平行移動,反転を組合せて移動させられた図形の対である訳です.合同は同型の一種です.

こういう目に見えるものでも,同型に気付きにくいのですが,数学ではさらに抽象的で目に見えないし,イメージするのも難しいものを扱います.したがって,余計,同型を見て取りにくい訳です. 他にも次のような同型は分かりにくいです.

  1. コーヒーカップとドーナッツ
    つきなみで申し訳ありませんが,トポロジー的には同型(同相)でも,部分の 大きさが変ると分かりにくいです.

  2. 「集合 A から集合 B への二つの関数の組 f, g : A→B」と「B を頂点,A をエッジとするグラフ」
    まあ,これはどんな構造に関して同型とするかきちんと述べないといけないとは思いますが,次の図のような対応で直感的に理解してください.ある領域から別の領域への関数の組は, 1つのグラフ(頂点とエッジからなるグラフ)を表していると見ることができます. でも,このことは中々気付かないですよね.

  3. 「A ∧ X という形の論理式の集合」と「A→X という形の論理式の集合」
    ただし,論理式 A は固定,また,同値な論理式は同一とみなします.この二つの 集合は,導出可能性を保つ1:1の対応があります.

    言っていることが分かりにくいかもしれませんが,

    P := {A ∧ X | X は論理式}
    Q := {A → X | X は論理式}
    X~Y は X → Y と Y → X が両方証明できるという同値関係とするとき
    P/~ と Q/~ は [X]→[A→X] と [A∧Y] ← [Y] で同型.つまり,
    これらは,P/~ と Q/~の間の1:1対応であって,
    X1 → X2 なら (A→X1)→(A→X2) だし,
    Y1 → Y2 なら (A∧Y1)→(A∧Y2)

    これは,証明が要ると言えば要るものでしょうから,すぐ気が付かなくても 当たり前かもしれませんが,形を変えると分かりにくいという例で出しました. 圏論で,これに基づいた随伴関手を見たとき,目から鱗,「『かつ』と『ならば』は, 一種の逆演算なんだ」と感激する人は結構いると思います. .....すみません.あまり良い例では無かったかもしれません.

次に,「同型を作り出す表現定理の活用」について話します. 数学では多くの表現定理があります.例えば,

それぞれの分野で対象を,他の分野のより身近なもので表現するの表現定理がかなり あります.例えば,順序集合 (P, ≤) については,
f : P → 2P

f(x) := {u∈P | u≤x}

とすれば,P と f(P)⊆2P で順序を集合の包含関係としたものは同型です.

P の構造について全く知見がない状況で,f(P) の構造が分かっているかというと そんなことは無いのですが,少なくとも,(f(P), ⊆) 側では

ということで,解析しやすさが全然違うと思います.

最後に「埋め込まれた環境の利用」について話します.これは上の 表現定理と関連があるのですが,表現定理は,表現する数学的なモノだけを 表現するのではありません.通常,そのモノをもっと大きな領域に埋め込む ことになるのです.例えば,

f : P → H
という表現のための関数があったとします.f によって P と f(P)⊆H は同型になりますが, そのとき同時に私たちは数学的な領域 H の中での f(P) というモノを 得ることになるのです.ここで大事なことは,H は,通常,数学的にとても良い性質を持っていて P にはない色々な要素も持っていることが多いということです.そのような良い性質の代表的な ものは「完備」と呼ばれる性質です.これは,H の中の任意の部分集合に対して その「極限」が存在するという性質です.例えば,有理数の集合 Q を考えると,数列(例えばコーシー列)はその中に収束先があるとは限りませんが,それを完備にした 実数の集合 Rの中には 必ず収束先が存在します.

上の有理数と実数の例では,完備化の具体的なメカニズムが分からないと思いますので, もう一つの例として順序集合を完備化する例を見てみましょう.

いま,順序集合として次の図のような (P, ≤) があるとします.これはとある会社のとある課の 構成で順序関係 ≤ は上司-部下の関係とします.不等号に = も入っていますから,自分自身は 自分自身の部下でもあると思うことにします.この課では,課員 d と課員 e には,どちらが偉いとも言えない2人の上司 b と c がいるとします.昔の会社はきちんとした木構造だったので しょうが,最近はあまり新入社員を取る余裕もなく,また,定年になってもあまり無理には 辞めさせられないので,こういう歪(いびつ)な構造の組織もあるかもしれません. この順序集合では d と e の上限 d ∨ e が一つに決まりませんから束(lattice)にはなりません.

順序集合の表現方法として MacNeille の方法があります.それは,P の部分集合 X⊆P に対して

M(X) := X の上界の集合 の 下界の集合 for X⊆P
X の上界とは,∀x∈X に対して,それ以上の元
同様に Y の下界の集合は ∀y∈Y に対してそれ以下の元

M(X) は1つの元からなる集合に対しては次のような簡単な式になる.

M({x}) = {u∈P | u≤x}

を割り当てる方法です.つまり,P の元に対して,P の部分集合を対応させる訳です. これにより (P, ≤) は (M(2P), ⊆) に埋め込まれます. 上の順序集合で実際に計算して,この順序集合を求めてみると次のようになります.

確かに,P は右側の順序集合の中に埋め込まれます.右側の順序集合の中から,左側の順序集合に 対応する元だけ集めて来れば,それは (P, ≤) と同型になる訳です.しかし,右側ではあと二つだけ元が増えています.一つは,{d, e} でもとの d と e の上司で,b と c の 部下です.これにより,d と e に二人の上司がいる状態は解消されます.新しい 順序集合では {d} と {e} には1人の上司 {d, e} が置かれます.そのかわり,{d, e} には 二人の上司,{b, d, e} と {c, d, e} がいますが,束論的にはこれは問題になりません. {d, e} の上限は自分自身で良いのですから(まあ,現実的にはやはりこういう組織構造は問題にはなるでしょうが...).やっぱりこれは, 束論で会社組織を直接モデリングするのは多少無理があるということかもしれません.あと,もう一つ 追加された元は, {d}, {e} の共通の部下で {} です.完備化で彼らにも部下が出来たのですが, これは空集合なので,単に形式的に一人付けたことにしただけなのかもしれませんね.

色々と戯言を引っぱりましたが,同型も役に立つし,表現定理を使って,現実にはまだない,理想の世界の中に同型の領域を作り出して,その世界を味わってみるのも良いというお話でした.

ではお元気で.

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